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社会の変化に対応する新しい時代の差別化戦略

ユニバーサルデザインを提議する10要件

さまざまな企業がユニバーサルデザインを手がけていますが、重要なのはサステナビリティな活動をすることです。ユニバーサルデザインを柔らかい言葉で言うとDesign for all、みんなのためのデザインとなります。
今までのユニバーサルデザインは、今を生きる70億の人が対象でした。しかしこれから大切になるのは次代のユーザーであり、どの世代も共有できるビジネスです。そこでは、環境対策や生物多様性保全など、まだ見ぬ子孫との共有も対象に入ります。さらに、人間だけではなく他の生物ともシェアできるビジネスでなければ、サステナビリティはカタチになりません。

ものづくりにおける「21世紀品質」開発

これまでのものづくりは、ハイブリッドカーなどハードウエア(技術)から出発したユニバーサルデザインでありCSVでした。
日本の製品は技術やデザインに優れていますが、最近では海外企業からコピーされ、新興国と差がなくなってきています。そこで差別化を図り生き残るために考案した言葉が「SENCE WARE(五感と心に訴求する品質)」です。ユーザーへのメリットだけでなく、あらゆるステークホルダーにメリットを与えるように作るのが、本当の意味でのユニバーサルデザインであるという考え方です。

直接的なユーザーを超えて、メリットを生み出す

住宅を造るときに、国産の間伐材を戦略的に多用する。それが売れれば、日本の住宅は日本の山づくり、森林づくりに役に立ちます。ユニバーサルデザインにも伝統工芸の技術を使えば、伝統工芸とのコミュニケーションが生まれます。このように、直接的なユーザーを超えてメリットを生み出せるデザインを考えてカタチにすると、「SOCIAL WARE(公益としての品質)」が生まれます。マイケル・E・ポーター氏が言う「シェアド・バリュー(公益と事業益を両立させる開発投資)」は、ソーシャルウエアの大切さを提起したものと理解しています。また、ものをいかに生み出すかだけでなく、お客さまやマーケットにいかに見せていくかも大切です。

バリューチェーンのCSV

ひとづくりとものづくりを同時に考えましょう。商品企画には自社の社員だけでなく、バリューチェーンのなかのいろいろな人材、あるいは商品のトレンドセッターと思われるNGOや母親層などと連携しながら行うと、参画してくれた方々がPRをしてくれ、最初の消費者になってくれます。「ものづくり」「ことづくり」「ひとづくり」「みせづくり」を循環させながら、ビジネスをカタチにしていくのが合理的な方法だと言えます。

環境、社会、経済の関係性

図の左側のように、経済、社会、環境の3つの円を並べてしまうと、ひずみが起きてしまいます。世の中は大きな環境のなかに社会があり、社会というコミュニティを動かすごく一部として経済があります。お金がなくても楽しく暮らす社会も存在するなかで、どのような技術を開発し、サービスを提供するかを考える必要があります。

時代はCSRからCSV(Creating Shared Value)へ

2011年にマイケル・E・ポーター氏が提唱した「公益と事業益を両立させるCSV」には3つの方向性があります。公益性の高い製品を提供するCSV、バリューチェーンの競争力強化と公益性を両立するCSV、事業展開地域での競争基盤強化と公益性を両立するCSV。これらのCSVは、ビジネス活動に大きなメリットをもたらします。

一般社団法人 CSV開発機構の事業創出スキーム

最先端の企画や技術をデジタル教科書で紹介したり、デジタル工場見学などを学校教育の現場につないだりすることもCSVになります。また、製造拠点を様々なところに置いて地域に貢献し、生物多様性のプログラミングに貢献することもCSVです。省庁と連携しながら技術を立ち上げる「CSV開発機構」では、具体的な制度設計に関わりながら、モデル事業の実現に向けて動いています。
企業と大学が自治体の現場に入り、自治体がどういうビジネスをしたいかをヒアリングしたうえで、ワークショップ形式でその事業をカタチにするための具体策を検討しています。これらの活動はマイケル・E・ポーター氏も注目しており、欧米のCSVとの連携も進めていく予定です。

未来社会仮説

20世紀までの「自動化社会」では効率的なシステムが普及し、世の中は便利になりましたが、環境破壊も行われてきました。そこで先進国は「最適化社会」を構想。企業はサステナブルレポートを作り、CO2削減を行いました。しかし、2011年の東日本大震災で、「最適化社会」には合理的・科学的なエビデンスがないことが明らかになり崩壊したと考えています。 これからは「自律化社会」が到来します。この背景にあるのが情報技術です。私たちは家などにいながらにして世界中のすばらしい情報を集めることができます。個人も企業も地方自治体も問題意識を持って情報を集め、それをベースに自ら計画し行動をとる企業が各所で台頭してきます。スマートシティのような自立的なアクションが、あらゆる場所で起きるようになるでしょう。

赤池 学(あかいけまなぶ)氏
株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所 代表取締役所長 赤池 学(あかいけまなぶ)氏
筑波大学生物学類卒。ユニバーサルデザインに基づく製品開発、地域開発を手がける一方、製造業技術・科学哲学分野の執筆、評論を行う。「生命地域主義」「千年持続学」「自然に学ぶものづくり」を提唱し、地域資源を活用した数多くの産業創出プロジェクトに取り組む。2014年4月より一般社団法人CSV開発機構理事長。著書『CSV経営』(NTT出版2013年)『生物に学ぶイノベーション』(NHK出版新書2014年)など

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