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実践編

今のお話を踏まえて次のテーマ「課題・障害をどのようにクリアしていけばいいのか」アドバイスをいただけますか。―加藤

金子氏

実は前年度に統合レポートを出そうとしたのですが、最終的に断念しました。理由は先ほどお話しした価値創造ストーリーの見える化が十分できなかったことと、政策関係者の意識変革が伴わなかったことから、“統合レポート”として世に出すのを見送ったものです。
そこで今年度では、まず関係者の意識を変えるための勉強会を開き、宮永さんにお願いして「統合レポートとは何か」という基本を教えていただきました。その後、各部署の担当者と「どのような位置づけでどういうコンテンツを入れたいか」を個別に話し合いながら、統一された形や方向性を出していくようにしました。また、価値創造ストーリーのビジュアル化については、プロジェクトメンバーが各自のアイディアを持ち寄り、議論を重ねながらブラッシュアップしていくようにしました。さらに外部の方から弊社のビジネスモデルを見たときのわかりにくさを指摘していただき、表現する際の参考にしました。

宮永氏

私がアドバイスをしていて難しかったのは、保険会社ならではの会計や財務報告をわかりやすく表現することでした。これまでの説明では外部の人には理解できず、多くの人数と時間をかけてコンテンツを作り直しました。また、肝となる価値創造のストーリーにも相当時間をかけました。あとはまだ挑戦中ですが、会社が目指す最終的な目標に至る道筋を表現する「ロジックツリー」は大きな課題です。これがあると、コネクティビティという点でも非常に良い統合レポートになるのですが、あと3年から5年かかるかもしれません。
MS&ADさんの場合、プロジェクトメンバーに加え、IRやCSR担当者以外のさまざまな専門部署の方も参加して一緒にディスカッションを行い、共通の問題意識が芽生え、いくつかの課題をクリアできました。積極的な協力者が社内に増えることでいい統合報告の制作が可能になります。したがって、多くの関係者を巻き込んでいくことも大切です。

では3番目のテーマ「統合レポートと他の報告書との関係式をどう考えるか」ご意見をいただければと思います。―加藤

宮永氏

MS&ADさんの例では、コーポレート・ガバナンス報告書に記載すべき項目がカバーできています。これは担当者も一緒になって統合レポート制作のプロジェクトに参加したからで、その後のガバナンス報告書の制作もスムーズに進んだと思います。CSR報告書の担当者もプロジェクトに入って情報を共有しており、そのことがCSR報告書の精度向上や表現の改善等につながるのではないでしょうか。また、事業報告や会社案内の作成は、統合レポートの内容でカバーできると思います。

金子氏

冒頭に申し上げた通り、外部に発信する情報を統合していくことが目標ですので、統合レポートがひとまず完成しただけで満足するわけにもいきません。宮永さんがおっしゃるようにCSR報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の連携は取れていますが、それも含めて情報をきちんと統合できるよう今後も努力していきます。

最後のテーマ、統合レポートを「年々ステップアップをしていくためには何が必要なのか」について、2015年版の反省も踏まえてお話しください。―加藤

金子氏

弊社の統合レポートについては、文字が多くあまり印象に残らないという意見もあって、もう少しコンサイスネスを意識していかなければいけないと思います。その反面、投資家からはより多くの情報を得たいという要望もあり、難しい課題であると感じています。今後はビジュアル化も含めて、さらに工夫をしていかねばと考えています。

宮永さんはコンサルタントという立場から、今後の課題も含めてどのようなサポートができるとお考えでしょうか。―加藤

宮永氏

継続的なステップアップは非常に重要ですが、先ほど説明した通り制作会社に任せきりでは統合レポートは作れません。価値創造ストーリー、つまり会社の何がどういう社会的価値を創り出しているかは、社内の人間が主導して考えなければわかりません。コンサルタントはスポーツでいうとコーチや監督で、実際にプレーする選手は事務局メンバーや社内の関係者です。われわれは良い報告書を作るにはどんなことを考え、どんな内容を記載しなければならないかを指示するだけで、それを社内の人たちが理解して制作に生かしてもらうことが大切です。完成までには相当な時間がかかりますが、いい統合報告になるまで一緒になってお手伝いすることがコンサルタントの役割だと考えています。

それでは、本日の議論を踏まえて最後のまとめを花堂さんにお願いいたします。―加藤

花堂氏

統合レポートを作るというのは、企業の中に改めて企業の経営理念をいわば一気通貫で入れ直すということです。ですから業者任せではできません。専門家の支援を受けつつ自分たちの力でそれをやり遂げた企業には必ず業績の向上が結果としてついてきます。
最後に一点付け加えると、統合レポートというとどうしても紙ベースで考えます。しかし、海外におけるコーポレートコミュニケーションを見ると、ホームページでの電子的開示手法を活用するものが主役です。今後は統合レポートの内容を、ホームページの中でどうコンテンツ作りに生かしていくかが、特にグローバル展開をする際の鍵になると言えます。ぜひこれを機会に、その点も考えていただければと思います。

金子 美和子(かねこ みわこ)氏
MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社 広報・IR部 部長 金子 美和子(かねこ みわこ)氏
日本を代表する保険グループであるMS&ADグループの広報・IR部部長。2年前から、ディスクロージャー誌、アニュアルレポートとCSRレポートの統合化に取り組み、そのプロジェクトの中心メンバーとして重責を果たす。
花堂 靖仁(はなどう やすひと)氏
早稲田大学知的資本研究会上級顧問 WICIグローバル ガバナンス・グループ顧問 花堂 靖仁(はなどう やすひと)氏
企業開示を中心に早稲田大学大学院等で専任教員を務めた後、早稲田大学知的資本研究会上級顧問をはじめ日本ナレッジ・マネジメント学会理事長としてIntangibles(見えざる経営資源)を活用するコンサルティングに従事。その一環として、WICI(知的資産/知的資本経営推進世界機構)のグローバル・ガバナンスグループ顧問としてIIRCと連携して統合レポートの導入推進に努める。
宮永 雅好(みやなが まさよし)氏
株式会社ファルコン・コンサルティング 代表取締役社長 宮永 雅好(みやなが まさよし)氏
株式会社ファルコン・コンサルティング代表。内外の運用会社での調査分析の経験を活かして、統合報告をはじめ、企業の情報開示関してにさまざまなアドバイスを行っているコンサルタント。WICIジャパンの統合レポート表彰の審査委員。
加藤 公明(かとう きみあき)
凸版印刷株式会社 トッパンアイデアセンター マーケティング企画部 コーポレートコミュニケーションチーム 加藤 公明(かとう きみあき)
10年以上にわたり、IRビジネスに関わる。株主通信、IR Webサイトなどの個人投資家とのコミュニケーション施策、株主総会の企画・運営、アニュアルレポートの発行など数多くの案件を手がける。また金融機関向け施策の実績が豊富で、特にディスクロージャー誌については毎年分析資料を発行し、最新動向の把握に努めている。最近では企業価値を伝えるツールとして統合レポートに注目しており、グローバルな視点で今後の展開を注意深く探っている。

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