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実践編

このパネルディスカッションでは、まず統合レポート導入に向かう近年の流れについて花堂さんからお話を伺い、そのあと4つのテーマについてパネリストの皆さんからお話をいただきます。では花堂さんお願いします。―加藤

花堂氏

WICI※1ジャパンではIIRC※2と協力し、3年前から「統合報告優秀企業賞」を選定・表彰してきました。2015 年の受賞企業について、どこが表彰のポイントになったのかを最初にご紹介させていただきます。

※1 World Intellectual Capital/Assets Initiative
※2 International Integrated Reporting Council

さて、統合報告書活動を世界的に推進するIIRCおよびWICI、GRI※3、A4S※4の4組織が、どのような影響のもとに活動を展開してきたか簡単に説明します。
一つは欧州の動きで、EUが欧州統合を目指し取り組んだリスボン・アジェンダを契機に、ヨーロッパの社会・経済を牽引する新たな枠組みを提供する調査研究活動として今世紀初めにかけて取り組まれたMERITUM※5およびPRISM※6プロジェクトにおいて、「見えない経営資源」の非財務の部分をどう体系化して企業の意思決定に反映させるかという考え方が打ち出されました。一方、米国では20世紀終盤、財務報告の限界に気づいた大手会計事務所のアンダーセンのパートナーであったジェンキンスが中心となり、AICPA(米国公認会計士協会)に特別委員会を組織し無形の経営資源と財務情報との繋がりを取り上げ、いわゆる「ジェンキンス報告」をまとめました。その後ジェンキンスは米国の財務会計基準設定機関であるFASB(財務会計基準審議会)の議長となり「ジェンキンス報告」の内容の会計基準化を進め、ほぼ完成させていました。しかし、生憎「エンロン事件」に米国の会計界が巻き込まれ、その基準化は棚上げされていました。その対応策としてAICPAは大手会計事務所のPwCとGrant Thorntonにマイクロソフトを加え、AICPAが事務局を務め財務報告から事業報告へという流れを持続させています。また管理会計の世界でも、伝統的な会計データや非会計的な物量データだけでは意思決定に役立たないとされ、バランスト・スコアカード(BSC)の導入につながりました。こうした一連の流れの上に、日本では経済産業省が知的資産経営を国策として打ち出し、OECDや国連もこの流れに協調する中で、IIRCを中心とする動きに収斂してきた経緯があります。

※3 Global Reporting Initiative
※4 Accounting For Sustainability
※5 Measuring Intangibles to Understand and Improve Innovation Management
※6 Policy‐making, Reporting and Measuring, Intangibles, Skills Development、Management

※7 WICI World Intellectual Capital/Assets Initiative
※8 GRI Global Reporting Initiative
※9 A4S Accounting 4(For) Sustainability

われわれが今直面しているESG(Environment, Social,Governance)の課題は社会的に大きなイシューです。問題解決の判断材料として重視されるのが企業を軸に置く社会の持続可能性(サスティナビリティ)であり、そのために企業活動全体を持続可能性の視点から表現し直そうというのがIIRCのオクトパスモデルです。その背景には企業の各種報告書が増えた過剰負担問題があり、報告書間における表現や内容が異なる開示情報の信頼性の問題も出てきました。それらをどう解決するかという問題意識が、統合報告書の作成に向かいました。
また、ステークホルダーと企業の関係の変化も大きな要因です。ICTが進みデータの遣り取りが双方向性を持つにいたった現代は、誰もが情報の発信者になり得ます。そこで重要なのがレピュテーション・マネジメントです。ステークホルダーの期待と企業が実現できることの間にはギャップがあり、企業は隙間を埋めるべく経営の中でできる限り努力します。その結果をステークホルダーが評価する際、ギャップを埋める努力を怠ったと判断されると、不満や中傷がネット上に拡散し炎上につながります。これを防ぐにはステークホルダーの期待にどこまで応えられるかを、事前に企業が明確に述べることが必要で、それには統合報告書が重要な役割を果たすのです。

ありがとうございました。では最初のテーマ「統合レポート導入のインセンティブと制作にあたっての課題・障害」について、まず宮永さんにお聞きします。―加藤

宮永氏

統合レポートについては、本来的な動機で制作している企業と、それ以外の企業の二つに分かれます。本来的動機とは、従来の報告書では情報開示・伝達の限界を感じ、企業の価値創造をステークホルダーにきちんと説明するために、統合報告の意義をよく理解して作ろうと思うことです。それ以外の企業は、アニュアルレポートとCSR報告書を一つにすることによるコスト削減が目的だったり、ライバル企業が作っているから自社もという動機が多いです。
実際に作るとわかりますが、本来的な統合レポートの意味を理解せずスタートするとまず失敗します。大変だからと制作会社に丸投げしても絶対にできません。IIRCのフレームワークは参考にはなりますが、あくまで原則なのでその通り作ってもだめです。結局はフレームワークを理解した上で、企業が自分自身をどう説明するかにかかっているのです。制作を始めると社内の抵抗にも直面します。担当者がどれだけ強い意志でがんばれるかが成功のポイントです。私は以上の点を、統合レポートを作りたいという企業に必ず説明します。

金子さんは統合レポート作成の現場リーダーとして、どのようなご意見をお持ちでしょうか。―加藤

金子氏

弊社が統合レポートを作った理由は3点です。各報告書で発信する情報が、統一されたメッセージになっていないという問題意識が経営層にもあり、そこが出発点になりました。もう一つは投資家の方から、長期的な視点で、非財務情報も含めて投資判断を行おうと考えた場合、どの報告書のどこを見ればいいかわからないとの指摘をいただいたことです。必要な情報を集めるには過去の分も含めて多くの報告書を参照せねばならず、統合された情報発信が必要と考えました。そして、最後の1つは、弊社はそれぞれのブランドで展開する複数の保険会社を有する持株会社であり、それらの事業会社の多様性がグループの強みでもあるわけですが、「グループ全体で目指すもの」や、「グループで共有する価値創造ストーリー」を表現する手段として、統合レポートを活用しようと考えたことです。
実際の制作過程では3つの課題がありました。従来のディスクロージャー誌とは異なるものを制作するという意識変革がなかなかできなかったことと、ストーリーやメッセージをわかりやすく簡潔に表現するのが難しかったこと。そして、価値創造ストーリーを表現するにあたり、私たち社員一人ひとりの無意識に内在する社内カルチャーをどう見える化し、コンテンツとして組み上げるかに苦労したことでした。

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