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実践!インターナル・ブランディング インターナル・コミュニケーションの潮流と課題

調査研究プロジェクトの概要

私は2013年12月、日本広報学会に「新しいコーポレート・コミュニケーションを考える会」を立ち上げました。今日の経営環境にふさわしい新しい企業コミュニケーション体系を作ってみたいと考えたからです。まず内部、つまりインターナルから入ろうと2014年4月から事例研究を開始し、7月から約2カ月にわたり23社のヒアリング調査(第1次調査)を実施しました。次に2015年12月から経営理念の浸透方策に関わるヒアリング調査(第2次調査)を行い、企業コミュニケーションの根本にある経営理念をどう浸透させているのか、7社に対してヒアリングをしました。

  • ・2013年12月
     法人会員企業と専門家との協働研究「新しいCCを考える会」設置
  • ・2014年4月~
    事例研究を開始
  • ・2014年7月~
    8月上旬にかけて会員企業等23社を対象にしたインターナル・コミュニケーション(IC)に関する第1次調査を 実施
    →対外広報に比べて、「経営課題対応の業務になっていない」実態が判明
  • ・2015年4月~
    第2次調査研究「経営理念の浸透方策に関わるヒアリング調査」を検討
  • ・2015年12月~2016年3月
    7社の会長/社長/広報部課長に対する資料調査及びヒアリング調査実施

第1次調査からわかったこと

第1次調査からわかったことは、調査したすべての企業に社内報あるいはイントラネットがあり、広報部門が担っていることでした。特にグローバル化への対応が共通の関心事であり、海外法人に対してどういう情報を何語で伝えるか、また日本で刊行する社内報の全情報を伝えるか、それとも限定すべきか。あるいはイントラネットの情報は何を伝えてどこを遮断するか。自社の事業全体が世界の企業と競合する中で、グループのインターナル・コミュニケーションにどう対応すべきかなどが課題となっていました。
さらに、3分の2の企業の広報部門が、社内報とイントラネットの状況しかつかんでいませんでした。ある社ですべて洗い出してみたところ、広義の広報ツールが百数十種類もあり、誰も統括できていませんでした。

【第1次調査から判明したこと】

  • 1.すべての企業に活字版/電子版の「社内報」があり、その業務を広報部門が担っている。
  • 2.グローバル化やブランディング、M&Aの推進、経営理念の浸透など、多様な経営課題に対応するさまざまなIC活動が展開され、グローバル化は各社共通の課題。もはや「事業の海外展開」ではなく「世界の企業との競争、競合状況」と観念的には理解していても、具体的な改革・実践が伴わない。
  • 3.広報部門が自社のICをすべて掌握していない。A社では、広義のICツールが全社に紙、電子媒体をあわせて百数十種類も存在しながら統括部門もないという状態。ツールから観察しただけでも「サイロ・エフェクト」状態が出現していたため大規模な改革運動を開始した。

第2次調査からわかったこと

(1)経営理念の浸透はトップの対話から

次に行ったのが、7社のトップへのヒアリング調査です。調査した企業のトップはみなさん、第一線の社員との対話を大変熱心に行っていました。
大手流通グループA社の社長は、金曜の夕方になると現場に一人で出かけます。そして20人くらいの若手社員を集めて、最初に30分ほど会社の方針や事業の考え方を話し、残りの1時間は第一線の社員から話を聞く。これを毎週行い、社長は2万数千人の従業員のうち、5,000人の顔と名前が一致するのだそうです。
電機メーカーのB社では、トップだけではなく役員が分担して、世界中の拠点で年間260回も対話集会を行っている。経営理念は、日本語を含め全部で30言語で配布し説明している。現地法人従業員には、やはりその国の言語で読んではじめて納得してもらえたといいます。
また、総合素材メーカーC社の会長は、国内10カ所、海外77カ所で第一線の人たちと対話集会を積み重ねてきたが、もう一度社長時代に戻れたらとの問いに「もっと社員の声を聞きたかった」と答えるなど、トップのみなさんは、それくらい顔をつき合わせたコミュニケーションに対する意識が高かったのです。

(2)各社における社内広報の取り組み

社内広報の取り組みですが、これは社内報だけではなく、あらゆるメディアを戦略的に活用することが重要です。いま働き方改革ということが盛んに言われますが、それとどう連動するかがわれわれの研究テーマでした。すると広報部門とコーポレート・スタッフとの協働という面も見えてきました。
一つの例は総合商社D社で、新社長就任を機に、社内広報・対内広報の考え方を変えました。同社では、いわゆる「三方よし」のCSR概念をベースに経営理念を統一し、社内広報を重点にしながら、そのバウンダリーをアウターに広げていくという活動をしています。そして経営理念のメッセージを、社長や中堅幹部自らに語らせる広告で打ち出したのです。普通は社内報の2ページ目か3ページ目に掲載するような内容かもしれません。
そこで広報部長にどういう意図かを尋ねたところ「確かにこれは社内広報的な内容かもしれません。うちはBtoBの企業で取引先は日本だけでなく全世界です。じゃあどうやってそういう取引先にお伝えするのか。新聞広告という手段を活用してみたのです」とのことでした。
電気機器メーカーE社では、独自の全社活動の取り組みをしています。グループ全体で年間4万数千人が参加をしており、目的は経営理念の浸透です。同社のミッションを具体的に仕事の場でどう実現するのか、グローバル各地域でその成果をグループごとに競い合い、各地域の代表グループが創業記念日に日本で最終プレゼンをして優勝を決定します。
また、先述のA社では、前向きで明るいグループビジョンを定めるとともに、その浸透の一環として「Good jobカード」という取り組みを始めました。3枚綴りのカードを上司が持ち、部下が日常の仕事の場で良いことをしたら、その場でコメントを書いて本人に渡し、1枚は自分が取っておき、もう1枚は広報部に渡します。良い情報を全社的に集めて社内報に掲載する、あるいは他の事業に活かすのが目的で、人事部は関与せず、経営戦略室と広報部が連携して行っています。

【第2次調査から判明したこと】

  • 1.調査企業7社の共通する取り組みは、経営理念の組織への浸透に向けて
    →トップ自身が極めて熱心に、第一線との「対話型コミュニケーション」に努めていること
    →”ほめる文化”の醸成に向け「具体的な仕組み」を設け、グループ全員の参加で進めていること
  • 2.「社内広報」≠「社内報制作」ではない。あらゆるメディアの戦略的活用であること
    →B to B企業/働き方改革との連動
  • 3.「広報部門」と「コーポレート・スタッフ」の協働作業
    →1+1=3~5にする施策が必要

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