TOPPAN SOLUTION

企業の未来を可視化する「事業ブランディング」

事業ブランドの定義

最初に、事業ブランドの定義を説明します。上図はブランド階層における相対的な位置づけであり、企業ブランドと商品・サービスブランドの中間に位置するのが事業ブランドです。両階層を意味的につなぐ、媒介となっていることが特徴です。

ブランド階層ごとの、コンセプトの比重のイメージ図です。上図の矩形の左側が企業の想い、右側が顧客のニーズで、それぞれの比重を表しています。企業ブランドは、一般的に長期的視点でブランドを構築するので企業の想いが強く、商品・サービスブランドはお客さまのニーズにいかに応えるかの比重が大きくなります。事業ブランドはいわば中期経営計画のような存在で、理念と実際の事業をつなぎ、理念を実現するための戦略に近いポジションだと思います。
つまり、事業ブランドは、企業の想いと顧客のニーズをうまく掛け合わせる戦略的なものだと言えます。

事業ブランドの事例

企業ブランド、商品ブランド、サービスブランドなどはすでに身近な存在と思いますが、事業ブランドとは何かということを一般的な事例で紹介します。
食品会社A社では、企業ブランドの下に4つの事業ブランドを持っています。それぞれ担っている役割が違い、一つは国内だけでなくグローバルに事業を展開しているブランドであり、また別の事業ブランドは、こだわり続ける伝統を表すポジショニングであったりします。このように事業の内容によって、イメージの違うブランドを使用しています。
大手電機メーカーB社の企業ブランドは、もともと同社の事業ブランドでしたが、社名変更時に企業ブランドに格上げしたものです。その下に多くの事業ブランドがあり、B社事業ブランド、B社保証事業ブランド、個別事業ブランドに大別されます。B社事業ブランドは「企業ブランド+Homes&Living」などの形式で、企業ブランドを活用して今後の注力事業を打ち出すブランドです。B社保証事業ブランドは、「○○ by 企業ブランド」の形式で、企業ブランドとの関係性を表してシナジーを生み出します。個別事業ブランドは、企業ブランド名やロゴマークは使用せず、個別事業の価値を訴求します。
また、衣料品量販店大手のC社では、「あらゆる人向けのカジュアル」「今までにない自由なファッション」「コンテンポラリーマーケットのファッションリーダー」という複数の事業ブランドを展開し、棲み分けを行っています。

事業ブランディングの実践

実際に事業ブランディングに取り掛かるには、まず事業計画が必要です。ここでは事業計画のパターンとして4つの例をあげます。1つめは「事業領域の再定義」。これまでの事業範囲を、見方を変え領域を拡張することです。2つめは「既存ブランドの体系化」。事業を進める中でさまざまなブランドが生まれますが、それらを整理統合する作業です。以上の2つは既存資産の応用という形になります。一方、新しい資産を投入するのが、3つめの新事業を立ち上げるパターンと、4つめの事業に必要な資産をM&Aなどで外部から持ち込むパターンです。そして、こうした事業計画を強化することにおいて、事業ブランディングは非常に効果的です。
事業ブランディングは、事業計画の価値化・可視化となるからです。価値化とは、社内向けの言葉を使用する「事業計画」を、お客さまや社会に対して価値のある言葉に変換することです。また、可視化とは、価値を視覚化すること(メッセージ化、ロゴ化など)でお客さまに認知してもらい、コンセプトが理解・共感されて行動につなげるキッカケとなることです。

事業ブランディングの効用

事業ブランディングの効用を4つにまとめました。
1つめは、社会に向けて具体的な未来像を提示できること。事業ブランディングは中期的な視点に立って、企業ブランドよりも具体的な未来像を示すことができます。2つめは、企業ブランドでは発せないメッセージを代弁、訴求できること。外部環境の急激な変化に対応するために既存ブランドと別の位置づけとして事業ブランドに語らせる方法です。3つめは、企業資産のポテンシャルを拡張、顕在化できること。事業領域の再定義やブランド体系化を価値化/可視化することでブランドの次の可能性を提示します。最後の4つめは、事業全体のコミュニケーションの効率化です。ブランドが個別に複数あったものをひとくくりにすれば、同じメッセージで共通化でき3分の1の労力でコミュニケーションが図れます。

事業ブランディングの事例

最後に、トッパンが手がけた事業ブランディングの事例を4社ご紹介します。
D社は、ある業界では非常に幅広い事業を展開し、2020年に向けて非常に成長性の高い事業でした。同社では個別のブランドが乱立しイメージが分散していました。そこで事業ブランディングにより、乱立・分散していた商品を一つにまとめ、より強いメッセージを発するブランドを作ろうと、事業ブランディングのプロジェクトを実施しました。プロジェクトのポイントは4つで、(1)企業の想いを抽出、(2)世の中のニーズの抽出、そして(3)この2つの意見と将来どうあるべきかの未来像を統合し、ブランドコンセプトを作りました。最後に(4)階層別コミュニケーションツール制作を実施し、どんなレイヤーのお客さまに対しても、納得いただけるものを目指しました。そしてこの4つのポイントに重点をおき、1年ほどかけてプロジェクトを実施しました。
日用品メーカーE社は、もとは別の大手薬品メーカーの事業ブランドから独立し、現在の体制になりました。同社では、ファミリーブランドに対するブランド戦略の策定を実施しました。乱立した事業・製品を整理するためにお客さまのセグメンテーションを明確にし、どういうものが求められているのかを規定をして、それぞれの層に合わせた表現を行いました。これは既存の整理だけではなく、未来の商品・事業のガイドラインとして、持続可能な事業の発展を意識してサポートしました。
教育事業会社F社では、ブランドデザイン戦略策定のお手伝いをしました。グループ理念を実現するための手段の一つとして、ブランドデザインコンセプトが存在することを明確に解説するガイドラインを作成しました。
大手化学企業G社では、事業ブランドのロゴの刷新を行いました。G社は事業ブランドが大きく2つ、カテゴリーブランドが3つあり、そのうちの一つ、リサイクル素材を主に扱うブランドです。丸い円を感じさせるデザインは、リサイクルで回るイメージかと思いますが、もう一歩先に進んだエコをデザインに込めました。

生島大輔(いくしま だいすけ)

凸版印刷株式会社 トッパンアイデアセンター マーケティング本部マーケティング企画部 生島大輔(いくしま だいすけ)
凸版印刷株式会社入社以来、企業コミュニケーションを戦略的にデザインする、という視点から、ブランドデザインディレクターとして活動。ブランド戦略のビジュアル化から、従業員へのブランド浸透支援までさまざまなブランディング業務に従事する。

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