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企業の価値を高めるために 第2章 企業におけるブランド戦略の違い

ブランディングに取り組む契機と事例の紹介

ブランドを変えるには、ブランディングに取り組むきっかけや大義名分があると、取り組みやすくなります。今回調査した約200社について、ブランディングに取り組むきっかけで多かった答えがこの4つです。実際に、私たちも以下のきっかけを通じてブランディング支援を行うことが多いです。ここではそれぞれの契機と、私たちが手がけた事例をかさねて紹介します。

  • 1.自社の存在をさらに浸透させるため
  • 2.同業他社との差別化が必要だった
  • 3.トラブルがあり、イメージを回復させたい
  • 4.周年やトップ/経営層の交代

(1)自社の存在をさらに浸透させるため

食品会メーカーA社は、数年前にグループ内の会社A1と会社A2が合併してできたものの、以前のイメージが強く、一つの会社になったことはあまり認知されていませんでした。そこでメーカーとしては最大のダイレクトコミュニケーションである工場見学をブランド発信の拠点として位置づけました。以前はバラバラであった、全国数カ所の工場施設を共通のコンセプトに基づいて整えていったのです。工場見学施設の運営やルールを整備し、工場見学のルート設計、空間デザインなどの総合的な空間ブランディングも実施し、視覚的にもイメージの統一を図ることで、A社が一つの会社であることを訴求できるように緻密に構成しました。

(2)同業他社との差別化が必要だった

工作機械メーカーB社は日本有数の規模の企業ですが、今後はもっとグローバル展開を進めたい、競合他社と差別化したいといった目的からブランディングに取り組みました。
競合他社は、インパクトのあるカラーリングで、展示会などでも目を引くデザインを採用していました。対してB社では、他の小規模な工作機械メーカーと展示会のデザイン上では差別化ができておらず、展示会では埋没しているような印象でした。そこでB社は老舗の日本企業の工作機械メーカーである伝統、歴史、そして誠実さを表現する新しいカラーを採用し、新たなカラーを用いてデザインを統一、一貫した世界観を構築することに成功しました。展示会で存在感のあるブランドを構築するとともに、名刺と封筒、パワーポイント、レターヘッドなどさまざまなツールも同様の世界観をもとにリデザインした事例です。

(3)トラブルがあり、イメージを回復させたい

製菓会社C社では、不正表示問題などが発生し、お客さまからの信頼を失った状況にありました。そこで、ブランディングによる信頼回復に取り組みました。以前は、同社の商品名は広く知られていましたが、社名はあまり認知されていませんでした。ロゴも決まったものがなく、書体やデザインもバラバラで統一されていませんでした。そこで、新しいC社のアイデンティティを策定し、さまざまなコミュニケーションツールに展開しました。今まで認知されていなかった社名を改めて浸透させることで、新たなアイデンティティと同社が変わったというメッセージを重ね合わせることができました。新しいイメージを定着させたことで、信頼回復に加え、その後の成長にもつながっています。

(4)周年やトップ/経営層の交代

大手空調設備会社D社はBtoB企業ですが、現在ブランディングに取り組んでいる最中です。きっかけは経営層の交代と周年事業、そしてグローバル展開の推進が背景にありました。まずはグローバル展開の旗印として、社名ロゴを英文表記に変更しました。ただし、従来使っていたシンボルマークは継承するなど、これまでの伝統を残す部分と捨てる部分をはっきり分けた上で、新しいグローバル企業への変化を志向しています。

ブランディングの効果

外部のブランドコンサルタントを入れるのはハードルが高いという声をよく聞きます。そこで、ブランドコンサルタントの導入率を今回の企業にむけてお聞きしました。結果としてはBtoB企業とBtoC企業ではあまり差がなく、平均すると約6割の企業が外部コンサルタントを導入していました。この数字から、ブランドのコンサルタントを導入することはそれほど珍しいことではないといえます。また、コンサルタントを導入すると明らかに成功率が高まっており、その成功率は2倍以上になると考えられます。

私たちの経験からも、ブランドを作る、成功させるにはある程度の時間が必要だと感じています。調査では、ブランドコンサルタントを導入してから時間が経つとともに成功率は高まる傾向にあります。ブランドを作るのは地道で先の長い作業であり、ある意味愚直にやっていくしかないと思っています。

金井 淳一郎(かない じゅんいちろう)

凸版印刷株式会社 トッパンアイデアセンター マーケティング本部 マーケティング企画部 ブランド戦略チーム 金井 淳一郎(かない じゅんいちろう)
凸版印刷入社後、商品企画部門で食品、菓子、医療医薬業界のクライアントにおけるさまざまな商品ブランドの商品企画とパッケージデザインを担当。「より永く残るブランドを創る」ことを目的にブランディング部門に異動。商品ブランディングの経験を活かし、消費者視点でのブランド分析やVIデザインのディレクションなど、様々なブランディングプロジェクトに携わる。

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