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企業の価値を高めるために 第1章 ブランディングとは何か?

ブランディングとは

(1)ブランドの語源・ブランディング

「ブランド」の語源は、古代スカンジナビア語の「焼き付ける」を意味する“Brandr”と言われており、自分の家畜を識別するための焼き印から来ています。ブランドはもともと目に見える印でしたが、現在では、経験や感情などが複合的に交ざり合い、受け手の頭の中に焼き付けられたイメージのことを指します。送り手がなにもしなくても勝手にできていくため、ポジティブ・ネガティブどちらにも転びます。それに対して「ブランディング」とは、受け手に、他者とは違う特別なものとして、好ましく認識してもらうために意識的に活動することです。

(2)ブランディングは必要か

「うちはモノが優れているからブランディングなんて必要ない」「形がないものを作って何の意味があるのか」と言う人もいます。そこで一つの事例を紹介します。
ある飲料メーカーの調査で、人気商品Aのヘビーユーザーたちを呼び「なぜAを飲んでいるのか」と質問すると、ほぼ全員が「味が濃くて一番おいしいから」と答えました。次に同じユーザーたちに、Aを含む4種類の飲料を同じ形のグラスに注ぎ、商品名を伏せて飲んでもらいました。するとAに対して「どうも味が薄くて特徴がない」という感想が多く、味の評価を平均すると4種類中3位という結果でした。
この例のように、お客さまは、「優れた商品」を買っているつもりで、実際は「優れていると思い込んでいる」商品を買っているのです。だからこそ、お客さまに好ましく認識してもらうためにはブランディングが重要だといえます。
これはBtoC企業の場合に限らず、BtoB企業の場合も同様です。歴史があるから、取引実績が豊富だから…という理由の取引は、そのような事実によってモノが良い「ように感じさせてくれる」からです。
これを商品単位ではなく、企業規模で行うことをコーポレートブランディングといいます。

(3)どのようにしてブランドを作っていけばいいのか

ブランドづくりに関して「うちの会社には他社よりも優れたところがない」とか「いままで『こう思われたい』なんて考えたことがない」という声もよく聞かれます。
しかし、ブランドに込めるのは現在ではなく未来であり、「将来必ずこうなる」と宣言することが大事です。ブランディングは一時のものではなく、時間をかけて受け手の頭の中に焼き付けていくことなのです。ステークホルダーとの間に未来を見据えた関係を作っていくために、先をしっかり見据えて「必ずこうなる」というブランドビジョンを掲げることで、外部の共感を得て支援が生まれ、社内もブランドビジョンに引っ張られてどんどん変わっていきます。
人間は生まれながらに中身と外見を持っており、思い通りに外見を変えるのはなかなか難しいですが、企業はある程度見せ方を変えられます。もちろん、一度決めた見せ方は確固たるイメージを築くために一貫していくことが望まれます。そのようにして、たとえ現在あまり魅力的に見えていない場合でも、将来のビジョンに相応しい見せ方に変えていくことができます。

ブランディングのお悩み

ここからはブランディングを進めていく上でよく相談される、お悩みについてご紹介します。

(1)よくある問い合わせ1

「うちの会社はブランディングに取り組んで、何度も頓挫しています」

自社でブランディングを進めているお客さまからよく聞かれる声ですが、目的を見失っている場合が多いように思います。当初の目的が「ブランドのファンづくり」だったのに、社内で作業していくうちに目標を「来場者数」に設定してしまうなど、数値目標や具体的な実施案にとらわれ、目的を忘れてしまうのです。あるレジャー施設でも同様の問題があったのですが、「一人ひとり丁寧に対応するためには、たとえ来場者数が減ってもいい」と方針を切り替えたらファンが増え、結果的に来場者数も増えたという例もあります。目的をしっかり見据え活動することが大事です。

(2)よくある問い合わせ2

「みんながイチオシのロゴデザインを社長承認に進めたらやり直しになってしまいました」

プロジェクトを進める上で、関係者が納得して決定していくプロセスは非常に重要です。それをないがしろにすると、うまくいきません。誰の意見までヒアリングするのか、事前の根回しをどこまでするか、社員をどう巻き込むかなど、プロジェクトの開始前に考えておく必要があります。プロジェクトの関係者全員に「納得感」があるように、ブランディングのステークホルダーマネジメントに気を配らねばなりません。

(3)よくある問い合わせ3

「部署ごとの考えが違うのですがすべて反映したい」

一つのブランドに対し一つの人格でないと確固たるイメージを築くことはできません。社内からいろいろな意見が出ると思いますが、想いを取りまとめて取捨選択して一つのブランドに集約すべきです。ただしブランドに階層を設けることはできるので、企業単位だけではなく事業・商品単位など複数のブランドを持つことは可能です。

(4)よくある問い合わせ4

「ブランディングに取り組めば今年の売り上げは何%伸びますか」

いろいろな捉え方があるものの基本的にはブランディングとマーケティングは違うものなので、一概には言えません。マーケティングは受け手に商品を買ってもらうといういわば「短期的な関係」で、ブランディングは受け手に応援してもらい、結果的に商品を買ってもらうという「中長期的な関係」です。そのため課題によってはブランディングよりもマーケティングに力を入れたほうが良い場合もあるでしょう。

(5)よくある問い合わせ5

「教科書通りにやってもうまくいかない」

本に書かれていることは基本的・汎用的な内容だったり、その企業だからこそ上手くいった事例です。企業ごとの課題や事情は異なるので、それぞれに合ったブランディングが必要になります。本にはそこまでは書かれていないので、コンサルタントに相談するなど、より自分の会社に合ったやり方を考えていく必要があります。

見えてきたこと

お悩みを見ていくと、ブランディングを進めていくためにはブランドマネジメントが重要ということがわかります。プロジェクトの開始時点でその点を意識することと、自社がブランディングを実施する際にどんな点に気をつけるべきなのかという視点が大事です。このことは、第2章「企業におけるブランド戦略の違い」で詳しく解説します。

井口 実夏(いぐち みか)

凸版印刷株式会社 トッパンアイデアセンター 井口 実夏(いぐち みか)
凸版印刷入社後、セールスプロモーション部門、金融業界専門の企画部門などで、流通、食品、飲料、銀行などをクライアントに、数多くのコミュニケーション企画立案業務を行う。 現在、多岐にわたる情報を整理・分析し、ブランド価値規定やブランドステートメントへと変換することを得意とし、BtoB企業から、流通、消費財メーカーなど多岐にわたるブランディングプロジェクトに携わる。

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