TOPPAN SOLUTION

WEBマガジン グーテンベルクの遺伝子

特別編集号 Sputniko!'s World

発想が変われば、世界が変わる。

豊島八百万ラボ

―― 「瀬戸内国際芸術祭2016」に出展された作品は、どういう思いでつくられたのですか?

 香川県の豊島に『豊島八百万ラボ』という、アートのような縁結び神社のような場所をつくりました。日本の神社文化についてリサーチしているとすごくおもしろくって、そのときのテクノロジーとともに進化していく側面があるんですよね。たとえば、東京の神田明神には「IT情報安全守護」というお守りがあります。ずいぶん先端的な神様だなと思われるかもしれませんが(笑)、交通安全のお守りも自動車が現れた後に誕生したことを考えれば、コンピュータのためのお守りがあってもいいですよね。このあたりは、「世界には八百万の神がいる」という多神教の柔軟さがなせる業だなぁと思います。今、世界中で宗教間の争いやテロが起きている中、こんな寛容で柔軟な信仰の捉え方もあるんだって、この場を通して発信できたらおもしろいなと思ったりして。

『豊島八百万ラボ』 2016

―― 豊島八百万ラボでは、「運命の赤い糸をつむぐ蚕」をテーマにした映像作品が上映されていますね。

 『運命の赤い糸をつむぐ蚕‐タマキの恋』という映像作品ですが、恋愛ホルモンと呼ばれる「オキシトシン」と、赤く光るたんぱく質の入った「運命の赤い糸をつむぐ蚕」にまつわる、タマキという女の子の恋の物語です。この作品は、つくば市にある農業生物資源研究所(現農業・食品産業技術総合研究機構)の研究者とコラボレーションしてつくりました。ガリレオの地動説を巡る裁判やダーウィンの進化論など、これまで科学は神話と対立するものと捉えられることが多かったんですが、あらゆるものに神が宿るとする多神教的な宗教観なら、科学と神話を融合させて捉えることもできるかな、と考えて。

『運命の赤い糸をつむぐ蚕 - タマキの恋』 2016

―― 蚕に他の生物の遺伝子を組み込んだのですか?

 はい。赤く光るサンゴの遺伝子と、オキシトシンをつくり出す遺伝子を蚕に組み込むことで、赤く光ってオキシトシンを含む「運命の赤い糸」を実際に開発しました。昨年4月に研究者に提案してから、8カ月後の12月に完成。アーティストの妄想が現実のテクノロジーで叶ってしまう、そんな「不思議な今」に生きてるんだなって思いました。

『TRANCEFLORA - エイミの光るシルク』 2015

―― これまでに数多くの作品を発表されてきたスプ子さんですが、最後にアーティストとしてのご自身を育んできたものは何だと思いますか?

 とにかく私は、これまでの人生の中で、いろいろな環境をホッピングし続けてきたんです。日本からイギリスへ、そして、アメリカへ。エンジニアリングから数学、音楽、デザイン、そして、アートへ。ホッピングしたおかげで、そのコミュニティの人が話していることを聞いて、「ここは不思議だな」とか「ここはおもしろいな」と客観的に見る視点が育まれたんだと思います。いわば、「外野精神」とでもいうものでしょうか。そんな外野に居続けたからこそ、まったく違う世界をつなげると、おもしろい化学反応やイノベーションが起きるという感覚が生まれたのかもしれないです。

―― トッパンとのコラボレーション、そして、これからのさらなる創作活動に期待しています。ありがとうございました。

  • PROFILE スプツニ子! 現代美術家 マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教

    2006年ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学科および情報工学科を卒業。英国王立芸術学院(RCA)デザイン・インタラクションズ専攻修士課程修了。2013年秋よりマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの助教に就任。アメリカ『Advertising Age』誌の「2011年を象徴するクリエイティブ50人」、イタリア『Rolling Stone』誌の「今後10年に最も影響を与えるデザイナー20人」などに選出。2016年「第11回ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本特別賞」受賞。著書に「はみだす力」(宝島社)。株式会社 ボン イマージュ所属。

撮影/凸版印刷株式会社
トッパンアイデアセンター クリエイティブ本部 映像企画部 フォトグラファー
小宮 広嗣(インタビュー写真)

ページトップへ

WEBマガジン

ideanote