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WEBマガジン グーテンベルクの遺伝子

vol.5 ideanoteセミナー「2012年のCSR活動に向けて」報告

ISO26000から考えるCSRのグローバル展開とステークホルダーエンゲージメント

はじめに

はじめに

 今回のセミナーでの講演にあたり、イギリスの老舗のコンサルティング会社、サステナビリティ社を設立されたジョン・エルキントン氏にいろいろと相談させていただきました。その際に、非常にすばらしいメッセージをいただきましたので、最初にご紹介させていただきます。
 「CSRが非常に難しいステージに入ってきたと思います。2012年は、マイルストーンとなるようなイベントが目白押しです。例えば、『成長の限界』が発表されてから40年。ブルントラント委員会からの報告書が発表されてから25年。リオ・デ・ジャネイロ(ブラジル)で初めて『地球サミット』が行われてから20年となり、6月に『リオ+20』が同じ地で開催。などなど、こうした機会に合わせて、世界のビジネスリーダーたちが、自分たちがいかに上手くやっているかをアピールする気配を感じています。その証拠に、2010年にグローバル・コンパクトが発表した調査結果で、世界のCEO766人中81%のCEOが『サステナビリティへの取り組みを自社の事業に取り込んでいる』と回答しています。これはナンセンスです。確かに、サステナビリティに取り込んでいるかもしれません。しかし、それは本当のサステナビリティとは言えません。では、本当のサステナビリティとは何でしょう。それは、私たちの今の経済システム、ビジネスモデルに抜本的な変化を起こす、そういったことを必要とする取り組みです」
 CSR、サステナビリティ、にはいろいろな考え方があると思います。しかし、ここでエルキントン氏が私たちに問いかけていることが2つあるような気がします。
 1つは、自社が何をすべきか、ばかりに目がいって、非常に限られた枠の中で部分最適になっていませんか、と問いかけているように思います。もう1つは、私たちのいうCSRには、さまざまな経済活動、経済システムがこれまでのビジネスモデルを本当に変革する力があるのでしょうか、ということだと思います。
 このセミナーでは、エルキントン氏のいう“本当のサステナビリティ”について、ISO26000をとおして考えていきたいと思っています。

ISO26000について

 さて、ISO26000は、5年に及ぶ長い作業部会での検討を経て2010年11月に発行された社会的責任(Social Responsibility:SR)に関する国際規格です。ISO9001やISO14001といった第三者認証を求める規格とは異なって、あくまでガイダンス文書という位置づけとなっています。重要な特徴としては、99カ国プラス産業界、消費者、労働者、政府間組織、非政府組織を代表する42機関が参加、マルチ・ステークホルダー・プロセスによって取りまとめられたということです。
 ISO26000をひと言でいうと「持続可能な開発の実現における課題の鳥瞰図、集大成」。つまりISO26000というテーブルの上に、今、世界で起こっている問題をまず出してみました。出したうえで、体系的、構造的に整理した、というとらえ方ができるかと思います。ですので、特に目新しい課題が発見されたわけではありません。

ISO26000に取り組む新興国・途上国

 ISO26000をみていくうえで、重要なポイントがあります。それは、新興国・途上国の視点です。今、新興国・途上国は急速に経済発展しています。一方で、環境汚染、貧富の差をはじめとするさまざまな格差の拡大、資源不足の懸念など、多くの環境問題、社会問題を抱えています。私たち先進国が抱える課題とは違う「持続可能な発展」が政策上の重要課題になっているのです。実際に、インドや中国では、さまざまなCSR関連の法規制強化の動きが進行しています。こうしたなかで、ISO26000を持続可能な開発の実現のため、自国の発展のために有効利用していこうという新興国・途上国が増えているのです。
 そして、世界市場のなかでマジョリティを形成している新興国・途上国において、ISO26000がどのように使われていくのか。また、海外の企業、政府とどのようなつながりを持とうとしているのか。しっかりと見守っていく必要があると考えます。
 少し余談になりますが、10月31日に世界の人口が70億人に達しています。そのうち先進国の人口が約12億人、新興国・途上国が約58億人です。2050年には世界人口が93億人に達することが予測されていますが、今の先進国の人口が11億人から12億人で若干減少、今の新興国・途上国が約82億人といわれています。人口問題をみてもわかるように、新興国・途上国がどう動いていくか、これらの国々とどう協力し、持続可能な社会を形成していくか、非常に重要なテーマであることがわかります。

ISO26000の構成

 ISO26000は、全7箇条で構成されています。そのなかで、一番ページを割いて丁寧に説明されているのが第6箇条「社会的責任の中核主題に関する手引」です。「一般」からはじまり、「組織統治」「人権」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題」「コミュニティへの参画及びコミュニティの発展」という内容になっています。
 第6箇条ともに、重要なのが「ステークホルダーエンゲージメント」です。これが第6箇条に挙げられているさまざまな課題に取り組むにあたって欠かせないことになっていくからです。ステークホルダーエンゲージメントがなければ、中核主題が一つも解決できないともいえるでしょう。

ISO26000をどう活用するか

 まず考えられるのが、取り組みのチェックリスト。220項目一つひとつをみながら「できている」「できていない」のチェックリストとして使う方法です。次に、自社の現状取り組みの整理、課題抽出。自社がどういった取り組みを「行っている」「行っていない」の課題抽出として使う方法です。また、CSRに関する理解を深めるツールとして使うこともできます。専門用語の解説であったり、どうやってステークホルダーを特定するのか、またわかったようでわからないエンゲージメント、その目的や手法が丁寧に説明されていますので、知識を得るうえでも有用かと思います。さらに、海外でのCSR展開を行っていく際の共通認識を持つためのツールとしても有効活用できるでしょう。
 最後に強調したいこととして、世界の課題を認識し、自社のCSR方針の見直しを行うための活用法です。世界が抱える課題をしっかりと見つめ、自社としてどういった貢献ができるのか、またどういったリスク回避をしなければならないのか、そういったことを考える機会としてISO26000をとらえるということです。

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