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WEBマガジン グーテンベルクの遺伝子

vol.2 「電子書籍の今」 後編

ITジャーナリスト 佐々木俊尚氏 ロングインタビュー 電子書籍とタブレットがもたらすもの Step3

教育現場などでも役立つ可能性を秘めた電子書籍タブレット

最後に、電子書籍化によって普及が期待される電子書籍タブレットが、どのような可能性を秘めているかについてお話しましょう。そもそも電子書籍タブレットは、リテラシーのハードルの低いデバイスであるということを一番最初にお話ししたことを思い出してください。もちろん、高齢者や障がい者の方々が使う際にも非常に使いやすくユニバーサルなものといえます。文字も大きくできるし、アプリケーション次第でマルチに使うこともできる。汎用性が高く、大変便利なものになる可能性があるということです。
ここで、具体的な一例をあげると、現在、電子書籍タブレットは、教育分野での利用が大いに期待されています。それは、電子黒板と電子書籍タブレットを連動させた新しい教育システムの確立です。電子書籍タブレットを教科書にすると、「何でもすぐに検索できてしまうので、子どもたちの考えるチカラが育たない」などという人もいますが、これは誤解です。基本的に電子黒板と電子書籍タブレットの連携というのは、電子書籍タブレットの画面を使って、自分で考える、問題を解く、何かの知識を得る。それら生徒一人ひとりの考えを電子黒板に集約する。そして、それをみんなが共同思考することで作り直すということが可能になる。つまり、これからの授業では生徒が単独で考えること、先生も含めた他の生徒たちの考えを連携させて共同思考するというような、いわばピンポンゲームみたいなことが重要になるのです。それをやるためには、電子黒板と電子書籍タブレットの組み合わせというのは、非常に効果的なツールだと思っています。
ただ、そこにはリテラシーの高い先生の存在が不可欠です。コスト面での問題が出てくるかもしれません。リテラシーの高い20~30代の先生が中心になって進めていけば、学校教育もそうした方向に大きく舵取りが変わるのではないでしょうか。コスト面でも私学であれば、導入の可能性が大いにあるのではないかと思っています。

電子書籍化が見せてくれる、ゾクゾクするような刺激的な未来へ

これまで電子書籍タブレットの可能性についていくつかご紹介させていただきましたが、電子書籍タブレットは既にいろいろな場面で使われています。例えば、地下鉄「表参道」の駅などでは、お客さまの道案内に役立てられているそうです。お客さまから道を尋ねられると、駅員さんが電子書籍タブレットを使って、グーグルマップなどで検索して案内をする。ここには、これまでのコンピュータではできなかった人間とコンピュータの関わり合いを変えるような新たな可能性が垣間見えます。お客さまと駅員さんというリアルな人間関係の間に、電子書籍タブレットというデジタルな媒体が介入して、そこで新たな関係が構築されているのです。
この電子書籍タブレットを含む電子書籍化の進展は、文化的にも、政治的にも、社会的にも、大きな変革をもたらすものであることはこれまでにも述べてきました。書き手にとっては新たな表現の方向性が、送り手にとっては次代を見据えたビジネスチャンスが、そして、読み手にとっては無限に広がる知との出逢いがある。
そんな電子書籍化から生まれる新たな世界は、私たちにどのような未来を見せてくれるのでしょうか。確かなことは、それがきっと私たちにとってゾクゾクするような刺激的な未来であるということだけです。(完)

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