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WEBマガジン グーテンベルクの遺伝子

vol.2 「電子書籍の今」 後編

ITジャーナリスト 佐々木俊尚氏 ロングインタビュー 電子書籍とタブレットがもたらすもの Step3

2010年「電子書籍元年」を経て、電子書籍が私たちの身のまわりに何をもたらそうとしているのか、どんな可能性を切り開いていこうとしているのか。「電子書籍の衝撃」を上梓するなど、電子書籍ビジネスの第一線を取材し続けているITジャーナリストの佐々木俊尚さんにインタビューしました。

流通システムに求められる、読み手に合わせた的確なマッチングモデル

Step1、Step2を通じて、私は電子書籍化による本の書き手、そして、送り手に求められる変化やこれからの可能性についてお話してきました。それでは、電子書籍化の流れは、活字中毒者である私を含めた読み手にとって、どんな変化や可能性をもたらすのでしょう。また、さらなる進化を遂げるであろうデバイスは、これからの人や社会にとってどのように役立っていくのでしょう。
インターネット時代にあって、検索できない情報はもはや生きた情報とはいえません。ネットの普及によって、情報は検索できるのが当たり前になったのです。ウェブサイトやブログ、新聞記事、動画、音楽などありとあらゆるコンテンツを私たちは検索システムによって探し出し、楽しんでいます。しかし、これまで本だけは十分な検索ができませんでした。Step2でも述べましたが、国立国会図書館が計画しているような全文検索が確立すれば、読み手にとってはもちろん、社会全体にとっても極めて有意義なものになるのではないでしょうか。
ただ、本を読んでいる人は、ベストセラー作品や雑誌だけを頼りに生きているわけではありません。純文学の愛好家であろうと、ミステリーが好きであろうと、あるいはケータイ小説が好きな地方の女の子も、ライトノベルをこよなく愛する萌え系の青年も、等しく言えるは、「自分だけが好きな自分のための本」を大切に持っているということです。そこには、読み手一人ひとりの嗜好に合わせた本との的確なマッチングモデルが必要なのですが、マス化してしまった日本の本の流通システムの中では、そんなことは到底期待できません。それでは、私たち読み手が、自らが求める、読みたいと思う本と出会うためには、いったいどうしたらいいのでしょう。

ソーシャルメディアへの参加からはじまる、自分にとってのいい本との出会い

基本的にあらゆる情報はインターネット上に流れているわけですから、その情報をどう集めるかということがポイントになります。しかし、現在の日本は、アップルストアをはじめとするいくつかの大手プラットフォームストアが席巻しています。しかも、これらのプラットフォームストアにある本の情報は、ニューリリースとランキングが中心。もちろん、今月のおすすめ新刊本などが紹介されていることもありますが、別にそれらの情報が読み手の一人ひとりに最適化されているわけでもありません。だから、自分にとっておもしろい本が、「トップページにはまったく見当たらない!」ということも現実にはよくあることなのです。これは、アップルストアでもそうですし、キンドルストアも、グーグルブックスも、どれもこれもほぼ同じことがいえます。
だとしたら、自分にとっていい本というのは、ソーシャルメディア上で、自分の信頼できる情報源から得るしかないという方向になると私は思っています。私は毎月10万~15万円くらいを本の購入に費やしていて、そのほぼ100%をブログなどで見つけています。現在、私が毎日チェックしているブログやニュースのサイトは650ほどにも及ぶでしょうか。それらを毎日読んでいると、その中にはやはり日頃からいろいろな本を読んでいるブロガーがたくさんいます。そこで「この人がおすすめしてくれる本は、いつもおもしろいよね」っていう人の本をクリックしていくだけで、毎月それくらいの金額になってしますのです。しかも、まったくハズレがないというところがすごい!「広告を見ておもしろそうと思って買ったらハズレ」「書店で本を手にとって帯のコピーに魅かれて買ってもハズレ」ということがけっこうあります。でも、ソーシャルメディアで、自分の信頼できる情報源から流れてくる情報は案外ハズレがないものです。
結局、自分に合った本を見つける方法は、ソーシャルメディアに一生懸命参加して、何よりもいい情報源とつながることしかないということになるわけです。でも、これはインターネットを既に使いこなしている若い世代にとってはもう当たり前のことになっているかもしれませんね。

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