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WEBマガジン グーテンベルクの遺伝子

vol.2 「電子書籍の今」 後編

ITジャーナリスト 佐々木俊尚氏 ロングインタビュー 電子書籍とタブレットがもたらすもの Step2

2010年「電子書籍元年」を経て、電子書籍が私たちの身のまわりに何をもたらそうとしているのか、どんな可能性を切り開いていこうとしているのか。「電子書籍の衝撃」を上梓するなど、電子書籍ビジネスの第一線を取材し続けているITジャーナリストの佐々木俊尚さんにインタビューしました。

人類の歴史上、わずか3回という「コンテナ」の変化が持つ意味

Step1では、「コンテンツ」「コンテナ」「コンベア」モデルの提唱を通じて、電子書籍化による「コンテンツ」の変化についてお話をさせていただきました。そこで、今回は、「コンテナ」である流通の変化について考えてみましょう。
私は、このモデルでいうところの最も重要なことは、コンテナの変化だと思っています。何で読むかという「コンベア」は、実は過去から現在に至るまでいくつもの変化を繰り返してきました。
そもそも、口承文学の時代、物語のコンベアは音でした。それが文字の誕生によって粘土板や石版、パピルス、竹簡、羊皮紙、紙へと変遷し、そして現代においてiPadの液晶だったりキンドルの電子ペーパーへと変わってきているのです。液晶や電子ペーパーはさらに進化し、これからも次々と新しいデバイスが出てくることでしょう。多くの人は紙の時代が長く続いてきたように思い込んでいますが、人類の歴史から見ればわずか数百年のことです。
一方で、コンテナはほとんど変わっていません。初期のコンテナは人から人へ口で伝える「口承」でした。それが文字の誕生によって、それを書き写す「写本」へと変わったのです。誰かが物語を書く、その物語を別の石版、別の羊皮紙に写本して書き写す。実は、この写本の時代がものすごく長かった。おそらく1500年くらいは続いたのではないでしょうか。その後、写本から印刷物流に大きく切り替わりました。
そして、コンテナが今、「デジタル配信」へと変わりつつあるというわけです。ということを考えると、コンテナの変化はわずか3回の変化に過ぎません。人類の歴史上、コンベアが頻繁に変わってきたことを考えると、電子書籍化によるこのコンテナの変化が重要な出来事であるといえるのです。

佐々木俊尚(ささきとしなお)
1961年生まれ。早稲田大学政経学中退。毎日新聞記者、週刊アスキー編集部を経てフリージャーナリストへ。「2011年 新聞・テレビ消滅」(文春新書)「仕事するのにオフィスはいらない」(光文社新書)「マスコミに、もはや政治は語れない」(講談社)「電子書籍の衝撃」(ディスカバー携書)など著書多数。総務省情報通信審議会新事業創出戦略委員会委員。ITジャーナリスト。

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