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WEBマガジン グーテンベルクの遺伝子

vol.2 「電子書籍の今」 後編

電子出版ビジネスの最前線で働く担当者に聞く 電子出版ビジネスの今、その先にあるものとは

電子出版ビジネスが今まさにどのような動きをしているのか、今後、どんな進化を遂げようとしているのか。電子出版ビジネスの最前線で働く凸版印刷株式会社デジタルコンテンツソリューションセンター事業開発担当者・大和泰之を直撃しました。

2010年5月28日は、電子出版ビジネスに新たな変化を起した日 として記憶されても良いのではないだろうか

日本の電子出版業界は、2009年頃から大小様々な変化を繰り返し、今もって流動的な状況です。その間もいくつかメルクマールとなるような出来事がありましたが、こと「電子“雑誌”」に特化すれば、大きなムーブメントを起こすターニングポイントとなったのは、2010年5月28日と言ってよいのではないでしょうか。何があったのか。そう、iPadが日本で発売された日です。
それまで(週刊誌や月刊誌、ムックなどの)雑誌といえば印刷物であり、紙で見て、かつ読む物であることが当たり前でした。そこに、iPadが登場したことで、紙の雑誌の誌面をそのままデジタル化して、iPadの画面上で読めるようにしたアプリを制作する動きが出てきました。印刷物をその体裁のままデジタルに切り替える。つまり「ターンドデジタル(turned-digital)」です。
もちろん、デジタル化、アプリ化したことによる特性も活かされます。例えばムービーが付いたり、連続写真のように見ることができるようになったり、webと連携したり……、いろいろと楽しめる工夫が備わったものが登場しました。しかし、それは印刷物の見た目であり、それがデジタル化されているだけで、本の印象の延長線上にある「ブックライク(BookLike)――本・雑誌(印刷物)のようなもの」な作品でした。 このあたりが2010年夏頃のムーブメントです。

「デジタルファースト」?

この間、雑誌のアプリ展開に魅力を感じる出版各社から、さまざまな雑誌アプリがリリースされました。ところが、思うようにダウンロード数が伸びないという現実に直面します。実際に、2010年にビジネスとして成功した出版系のアプリといえば、文字作品の「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(著:岩崎夏海)と「歌うクジラ」(著:村上龍)の2+アルファくらいだと思います。雑誌の世界では、海外ではいち早くiPadにレイアウトを最適化させた「TIME」アプリが話題をさらいましたが、日本におけるビジネス的な成功例はといえば、なかなか見出すことができない状況が続いています。
この現実に、出版各社はもちろん、私たちも「もっと売るためにはどうすればよいのか」「突き抜けるためにはどうしたらよいのだろう」と頭を悩ませます。デジタルならではの表現の追求、EC(電子商取引)との連携、SNSとの連携、有料モデル、無料モデル、様々なアイデアが今も実現可能性を試されています。そうした中で、にわかに注目を集めはじめているのが、紙を起点とせず、比較的webに近いような作品で「ボーンデジタル」あるいは「デジタルファースト」と言われる作品群です。印刷物ありきの発想ではなく、最初からデジタルとして考え出されたものです。
日本で生まれたものの代表例としては、この5月に創刊された講談社の「熱犬通信」などが、この範疇に含まれます。熱犬通信は、かつての「Hotdog Press」の電子的な復刊となるのですが、スマートフォン向けに開発されたアプリで、主なコンテンツは、エンタメ情報やコラム、グラビアなど。ソーシャルメディアでの口コミによる波及効果も意識したつくりになっています。デジタルの特性を考えた時に、「雑誌」のこれからの一つの形を示しているのかもしれません。
このような「デジタルファースト」の特長は何かと問われると、「webのようなもの」。見た目もwebを強く感じるものとなっており、常にダイナミックな通信環境下で情報更新頻度も高い。手に取る印刷物が存在せず、私たちはこのアプリを通して初めてコンテンツと接触するので、第一印象としてはwebということになってしまうのでは、と思います。

大和泰之
大和泰之
凸版印刷株式会社 デジタルコンテンツソリューションセンター 事業開発部
1992年凸版入社。商業印刷や出版ビジネスに関わった後、電子出版(特に電子雑誌)のビジネスモデル構築に携わる。

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