ニュースリリース

2009年06月22日

最新の遺伝子型解析システムをタイに提供、 個人の遺伝情報に基づいたエイズ治療薬の使い分けを実証する臨床研究を開始 〜小型遺伝子型解析システムを活用した国際プロジェクトで、「オーダーメイド医療」実現へ〜

凸版印刷株式会社 株式会社理研ジェネシス 独立行政法人理化学研究所

 凸版印刷株式会社(足立直樹社長)、株式会社理研ジェネシス(塚原祐輔社長)、独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、個人の遺伝情報に応じた医療を可能とするオーダーメイド医療の実現に向け、2009年5月、共同で開発した臨床現場で利用可能な小型遺伝子型解析システム(※1)「TPSA-003」を、タイの国立マヒドン大学付属Ramathibodi(ラマティボディ)病院へ貸与して試験運用を開始しました。6月下旬からは、理研が同大学と共同でTPSA-003によるエイズ治療薬の使い分けを検証する臨床研究を本格的に実施します。

 理研ゲノム医科学研究センターは、国際連携研究の一環として2006年12月よりマヒドン大学と共同で、エイズ治療薬の1つであるネビラピンの重篤な副作用(薬疹)を予測する遺伝子解析研究を行い、HLA-B*3505という遺伝子型を調べることで、薬疹の発症を非常に高い確率で予測できることを明らかにしました。(Pharmacogenetics and Genomics 19(2), 139-146, 2009)
今回、この研究成果を医療現場へ応用するために、理研はマヒドン大学と共同で臨床研究を実施します。本臨床研究では、実際のエイズ患者に対しネビラピンを投与する前に個人の遺伝子型を測定し、医師がその情報をもとにエイズ治療薬を選択することで、副作用のリスクを回避できるかどうかを検討します。また遺伝子型検査による医療費削減効果についても評価を実施します。
このため、2009年4月に理研とマヒドン大学が本格的な臨床研究開始に向けた共同研究契約を締結、5月には、凸版印刷、理研ジェネシスおよび理研が共同で開発した遺伝子型解析システム「TPSA-003」をタイのマヒドン大学へ貸与し準備を進めてきました。

 本システムを医療現場へ応用することにより、タイにおけるエイズ患者に対する医療の質を向上するとともに、無駄な医療費を削減することができ、わが国における重要な国際貢献の1つとなり得ると考えます。
 さらに今回の臨床研究により、患者個人個人の遺伝情報に応じた適切な医療を提供する「オーダーメイド医療」の実現に向けて大きく前進した第一歩となります。


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【背景】
 オーダーメイド医療とは、患者の遺伝的背景を考慮し、科学的根拠に基づいて各個人に効果的な治療・投薬方法を提供するものです。この医療によって患者個人のQOL(生活の質)が向上するとともに、わが国においては薬剤副作用から派生する医療費4〜5兆円の軽減が見込まれ、年々増大する医療費の抑制につながります。
 このオーダーメイド医療を実現するために、DNA多型(※2)の1つであるSNP(Single Nucleotide Polymorphism:スニップ ※3)が、遺伝的な個人差や薬の効き方、特定の病気にかかりやすいか否かを予測する手段として注目され、現在、さまざまな疾患や薬剤についてSNPとの関連を解明する研究が進行しています。このSNPの遺伝子型の組合せ(ハプロタイプ)を、実際の医療現場において短時間かつ簡便に判定可能な小型の解析システムが普及すれば、個人の体質にあった効果的な治療を施すことが可能となり、検査において患者を長い間待たせることもなくなります。
 このため、現在、検査に関する高度な訓練や知識がなくともオーダーメイド医療を実現できる遺伝子解析システムの研究開発を進めるとともに、実際の医療現場において臨床研究が進められており、オーダーメイド医療の具体化まであと一歩のところまで来ているのが現状です。

 凸版印刷と理研ジェネシス(※4)および理研は、この遺伝子型解析システムに関する研究開発を共同で行い、2008年には1時間以内という短時間で検査ができる小型のプロトタイプ「TPSA-003」を完成させました。

【臨床研究の概略】
 タイはアジア地域においてエイズの流行が比較的早くから拡大、1990年頃には深刻な状態に陥り、依然として深刻な社会問題です。
 エイズ感染者の発病や母子感染を防ぐための薬、エイズ治療薬は、毎日飲み続けなければなりません。しかしエイズ治療薬は高価なため、経済的な負担が大きくなります。そこでタイでは比較的安価なエイズ治療薬「ネビラピン」を治療の第1選択薬としていますが、副作用である、皮膚や粘膜、目などにおける重篤な炎症(薬疹)の発症頻度が21%と非常に高いことが問題となっています。

 理研ゲノム医科学研究センターは、ネビラピンによる薬疹の発症リスクと高い関連を示すDNA多型マーカーを発見しました。この発見を臨床の現場で活用するため、理研、凸版印刷および理研ジェネシスは、共同で副作用の発症リスクを予測する遺伝子型解析システムを開発しました。
 この遺伝子型解析システムを活用し、患者の健康面での負担と医療費の削減を目的とした臨床研究をスタートさせます。

 ・臨床研究の実施期間:2009年4月から2010年9月までの18ヶ月間
 ・対象人数: エイズ感染患者2200人 (マヒドン大学付属病院を含め合計10病院で検体収集)
 ・検証方法: 半数の1100人にはネビラピン投与を行い、残りの1100人のうち遺伝子型解析システムによって
 薬疹発症リスク型と判定された患者では、ネビラピン投与を回避する治療を実施。
最終的にこれら2群の結果を解析し、発症リスク予測の有用性を実証する。

【遺伝子型解析システムの概略】
今回の遺伝子型解析システムは、エイズ治療薬ネビラピンの副作用である薬疹の発症リスクと高い相関を示すDNA多型マーカーを判定し、薬疹発症リスクを予測するものです。
 ・提供台数 :2台
 ・外形寸法 :400(W)×730(D)×630(H) mm
 ・重 量 :約50kg
 ・検 体 :ゲノムDNA
 ・解析時間 :60分/2検体
 ・チップ  :ディスポザブルタイプ(2検体/チップ)

【今後の展開】
凸版印刷、理研ジェネシスおよび理研は、投薬前遺伝子検査などさまざまな用途で使用可能な遺伝子型解析システムの研究開発を行っていきます。さらに将来的には、これらの研究開発を幅広く医療現場に役立て、オーダーメイド医療の実現に努めます。

<補足説明>
(※1)遺伝子型解析システムとは: DNAの特定部分の違いにより、薬に対する副作用や特定の病気の発症などに関して、各個人の体質が異なることが発見されています。このDNAの特定部分の違いを、解析し判定するシステムが遺伝子型解析システムといわれ、副作用や病気の発症の有無を事前の検査で予測することができるとして、注目を集めています。

(※2)DNA多型とは: 約30億塩基あると言われているゲノム塩基配列において、突然変異や相同染色体の遺伝的組み換えなどにより、塩基の配列の差が生じることにより起こる個人差のことを意味します。遺伝子座位によっては肌の色や薬に対する耐性など著しい違いを生み、またこれらの形質は遺伝します。

(※3)SNP(Single Nucleotide Polymorphism:スニップ)とは: DNA多型の中でもゲノム塩基配列中の一塩基が各個人で異なっている箇所があり、それらはSNP(single nucleotide polymorphism: 一塩基多型)と呼ばれています。これらの違いが薬物応答性や病気のなりやすさなどの個人差を生むため、これらを検査することで、各患者それぞれに適した投薬や治療の実現が可能になります。

(※4)株式会社理研ジェネシス(http://www.rikengenesis.jp/)とは: 理研ジェネシスは、理研ゲノム医科学研究センターが培ったSNPタイピング技術を基盤として、株式会社理研ベンチャーキャピタル(有馬朗人社長)と凸版印刷の共同出資によって2007年10月15日に設立されました。理研との技術連携を図りながら、SNPタイピングの受託解析事業、解析システム事業、周辺サービス事業などを推進し、オーダーメイド医療を実現化することによって個々人のQOL向上を図ります。

以上