葛飾北斎晩年の大作「須佐之男命厄神退治之図」を読み解くデジタルコンテンツを製作、関東大震災で焼失後94年ぶりとなる牛嶋神社への帰還を実現

 凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾、以下 凸版印刷)は、最先端デジタル技術を活用し、関東大震災で焼失した葛飾北斎の大絵馬「須佐之男命厄神退治之図(すさのおのみこと やくじん たいじのず)」(以下 大絵馬)を、残された白黒写真から原寸大で推定復元する墨田区のプロジェクトに、2016年に参画しました。

 このたび凸版印刷は、推定復元時のデータを活用し、大絵馬に描かれた世界を読み解くデジタル大絵馬コンテンツを製作しました。牛嶋神社(所在地:東京都墨田区)御鎮座1160年大祭を記念し、2017年9月15日(金)から9月17日(日)まで、同神社の本殿にて開催される本コンテンツの上映イベント(主催:すみだ北斎美術館)で初公開します。

 デジタル大絵馬『スサノオとヤクジン』は、大絵馬とそこに描かれた世界をデジタルで鑑賞できるコンテンツです。牛嶋神社本殿内の、焼失前に大絵馬が掲げられていたと考えられる位置に、4K解像度デジタルプロジェクションを用いて本コンテンツを原寸大で投影。タブレット端末を操作することで、絵がダイナミックに動き出し、作品から着想された世界観を表現します。また、須佐之男命や厄神をタッチすれば、それぞれの絵に関する解説が表示されます。焼失前の様子の再現を鑑賞できるだけでなく、デジタルならではの切り口で、大絵馬の世界を楽しみながらより深く理解できます。
 公開期間中には、凸版印刷の推定復元プロジェクトリーダーが本コンテンツを用いて、トークイベントを実施。大絵馬の推定復元や描かれた世界について解説を行います。

 凸版印刷は今後も、デジタル技術を活用し、貴重な文化財の次世代への継承に貢献するとともに、観光資源として提供できる「デジタル文化財」の開発を推進していきます。

デジタル大絵馬『スサノオとヤクジン』(左)と、展示イメージ(右)

デジタル大絵馬『スサノオとヤクジン』(左)と、展示イメージ(右)
© Toppan Printing Co., Ltd.

今回製作したデジタル大絵馬コンテンツについて

4K解像度で大絵馬を再現

焼失前に大絵馬が掲げられていたと考えられる位置に、4K解像度デジタルプロジェクションを用いて本コンテンツを原寸大で投影することで、焼失前の様子の再現を鑑賞できます。また、他の施設などでも場所を選ばず大絵馬を再現できます。 

動き出す大絵馬で作品の世界観を表現

タブレット端末を操作することで、絵がダイナミックに動き出します。デジタルならではの切り口で、作品から着想された世界観を表現します。 

大絵馬の解説を表示

須佐之男命や厄神をタッチすれば、それぞれの絵に関する解説が表示され、作品の世界をより詳しく理解できます。

牛嶋神社御鎮座1160年大祭記念「須佐之男命厄神退治之図」上映イベント

日時: 2017年9月15日(金)~17日(日) 18:00~21:00
    トークイベント 各日 18:30~、19:30~、20:30~ (各回15分程度)
主催: すみだ北斎美術館
企画: 凸版印刷株式会社
会場: 牛嶋神社本殿内(東京都墨田区向島1丁目4-5)
料金: 無料
※会場内混雑状況により、入場を制限する場合があります。 

葛飾北斎「須佐之男命厄神退治之図」とその復元図について

 「須佐之男命厄神退治之図」は、弘化2(1845)年、北斎が86歳の時に描いた肉筆画で、牛嶋神社に奉納された大絵馬です。須佐之男命と、その従者の前に15体の様々な厄神がひざまずき、今後悪さをしないように証文を取られているところが描かれています。

 幅約2m76cm×縦約1m26cmという北斎晩年最大級の傑作でしたが、大正12(1923)年の関東大震災で焼失しました。しかし、日本最古の美術雑誌「國華」240号(明治43(1910)年刊)などに、白黒コロタイプ印刷(※1)の画像が掲載されており、これが現代に残る画像資料となっています。

 残された1枚の白黒写真をもとに、その撮影技法や写された絵の具の質感、濃度を写真科学や美術史、伝統技法など技術の粋を集めて調査と評価を実施。2016年の「すみだ北斎美術館」開館にあわせ、100年近くのときを超えて作品を蘇らせました。

 この取り組みは、その独自性から数多くのメディアでも取り上げられ注目を集めるとともに、大英博物館開催の特別展「Hokusai Beyond the Great Wave (北斎-大波の彼方へ-)」(2017年5月25日~8月13日)でも紹介されました。

「須佐之男命厄神退治之図」推定復元
企画制作:墨田区、すみだ北斎美術館
製作:凸版印刷株式会社
監修(彩色):一般社団法人 天野山文化遺産研究所 代表理事 山内章氏
監修(再現撮影):東京文化財研究所 保存科学研究センター 保存環境研究室長 吉田直人氏
監修(美術史):十文字学園女子大学 人間生活学部 文芸文化学科 准教授 樋口一貴氏
収蔵: すみだ北斎美術館

凸版印刷のデジタルアーカイブについて

 凸版印刷では人類のかけがえのない資産である文化財の姿を後世へ継承するため、印刷テクノロジーで培った色彩を管理する技術と高精細画像データ処理技術、形状をデジタル化する立体形状計測技術を核に、より精確なデジタルアーカイブを行うため、文化財専用の大型オルソスキャナーを開発するなど、技術開発を積極的に進め、これまでに、国宝「鑑真和上坐像」(唐招提寺所蔵)、国宝「檜図屏風」(東京国立博物館所蔵)など、国内外の数々の貴重な文化財のデジタルアーカイブに取り組んでいます。
 さらに、国宝「洛中洛外図屛風」(東京国立博物館所蔵)や重要文化財「東征伝絵巻」(唐招提寺所蔵)など文化財の高品位複製やVR作品の製作など、デジタルアーカイブデータのさまざまな表現手法の開発を推進しています。
URL: http://www.toppan-vr.jp/bunka/
 

※1コロタイプ印刷
 コロタイプ印刷とは、写真製版法を使った印刷技法の中で最も古いもので、網点の大小ではなく、版面のゼラチンの不規則なしわを利用し、そのインキの受容性の多少によって濃淡を表現する印刷方法である。平版方式で網点を用いない連続階調の印刷方法であり、代表的な長所は写真の調子を他のどの版式よりもよく複製できることである。このためコロタイプ印刷は、写真や絵画などの複製を得意とし、網点では再現できない印刷に利用されてきた。

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