2012/06/06

早稲田大学と凸版印刷、3D化技術を用いることにより
映像コンテンツの新たな表現・利活用を提案
〜「坪内逍遙 最終講義」ならびに「富嶽百景」の3Dコンテンツを試作〜
早稲田大学
凸版印刷株式会社

 早稲田大学 理工学術院 河合隆史研究室と凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾、以下 凸版印刷)は、映像コンテンツの立体視(3D)化に関する共同研究を実施しました。その結果、歴史的な映像資料の臨場感を高め、絵画を空間的に鑑賞するといった、従来にはなかった表現・利活用の方法を提案し、その実現例として3Dコンテンツを試作しました。
 人間が物体を立体的に知覚するには、その物体のサイズをはじめ色や模様などの情報を総合的に利用しています。本共同研究では、奥行き情報が少ない既存の映像に対して、左右眼間の見え方の違い(両眼視差)を付加して3D化を行うことで、新たな表現手法や興味・関心への影響について検討を行いました。この検討対象として、記録映像『坪内逍遙 最終講義』と、葛飾北斎の浮世絵『富嶽百景』を選定しました。
 これらの3Dコンテンツは、2012年6月7日に開催される「超臨場感コミュニケーションシンポジウム」(場所:日本科学未来館7階 みらいCANホール)で一般公開される予定です。

白黒フィルム映像をデジタルリマスタリングした、『坪内逍遙 最終講義』の一場面
素材協力 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館
制作・著作 凸版印刷株式会社

高精細デジタルアーカイブ化した、葛飾北斎『富嶽百景』の一場面
協力・底本提供 浦上蒼穹堂
制作・著作 凸版印刷株式会社

■共同研究の目的と背景
 近年、3D映画の上映数の増加や3D対応テレビの普及により、3Dコンテンツへの関心が高まっています。しかし映像を3D化する際に、どのような素材に対して、どのように奥行きを与えれば高い効果を得られるかについては、未知の点が多いという課題がありました。
 そこで、早稲田大学と凸版印刷では、安全で魅力的、かつ効果的な映像コンテンツの3D化を行う共同研究を、2011年6月から2012年3月まで実施しました。
 本共同研究において、歴史的な記録映像の3D化では、さまざまな素材の比較・検討を行いました。その結果に基づいて、記録映像『坪内逍遙 最終講義』を題材とした3Dコンテンツを試作しました。
 また、版画を素材としたものでは、モチーフに応じて視差や画角を制御・演出することで、描かれた世界を空間的に鑑賞することが可能となりました。

■ 試作コンテンツの詳細
『坪内逍遙 最終講義』
名称:「坪内逍遙 最終講義3D」
試作媒体:3Dコンテンツ(4分)
元素材:16mmフィルム
コンテンツ概要;
1927年12月15日に撮影された、早稲田大学 坪内博士記念演劇博物館が所蔵する同素材のデジタル化と3D化を行いました。
技術詳細;
元素材であるフィルム映像についてデジタルリマスタリングと、3D化を行いました。85年前に撮影された映像は経年劣化による傷や「白飛び」、「黒つぶれ」が非常に多く、そのままでは自然な3D化を実施することが困難でした。本試作では、3D化を前提としたデジタルリマスタリングを実施。歴史的にも貴重な講義の様子を3D化することで、独特の臨場感を体験することができました。
葛飾北斎『富嶽百景』
名称:「立体視で読み解く富嶽百景 ~江戸のテクノロジー~」
試作媒体:3Dコンテンツ(5分×2種類)
元素材:木版画
コンテンツ概要;
葛飾北斎『富嶽百景』を3Dで楽しむ映像コンテンツを試作しました。
『富嶽百景』に描かれた、江戸時代の最先端のテクノロジーともいえる「天文台」「カメラオブスクラ」を3D化することにより、そこに描かれたモチーフが鮮明に浮かび上がります。
技術詳細;
『富嶽百景』の初摺本(浦上蒼穹堂・浦上満氏提供)を凸版印刷が高精細にデジタル化したアーカイブデータをもとに3D化を行っています。
本来、浮世絵は絵師の高度な感性と技術により実際の空間を平面に構成しています。色彩が少なく、線で構成されている版画に単純に奥行きをつけるだけでは自然な奥行き感を表現できず、書割が重なっているように感じてしまいます。本試作では、線で構成されている版画の構成を考慮し緻密に両眼視差を付加することで、実際には存在しない空間の広がりを表現することができました。

■ 今後の目標
 本共同研究の成果に基づき、早稲田大学と凸版印刷は、3D化技術を効果的に応用した、新たな映像表現手法を実現していきます。また、既存映像の3D化による新たな価値の創出や利活用を推進していきます。さらに凸版印刷は早稲田大学の協力により、博物館や美術館、企業などが資料映像として所有するアナログ素材のデジタルリマスタリングから3Dコンテンツの制作までを、トータルソリューションとして提供していきます。

■ 「超臨場感コミュニケーションシンポジウム」 詳細
主催:超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)
   独立行政法人情報通信研究機構(NICT)
開催日時:2012年6月7日(木) 13:00~17:00 (休憩&デモ見学15:10~15:50)
開催会場:日本科学未来館7階 みらいCANホール (デモ展示:会議室1、2)
参加対象者:URCF会員および一般
参加費:無料

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以上

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