2012/02/08

国立情報学研究所、凸版印刷、日本ユニシス、セブン&アイ・ホールディングス
世界初、CO2排出権取引の新たな取引手法を実証実験
〜バレンタインにメッセージカードを贈って東北復興支援に!〜
そごう横浜店 2月9日(木)から2月13日(月)まで

 国立情報学研究所、凸版印刷株式会社、日本ユニシス株式会社、株式会社セブン&アイ・ホールディングス、三菱UFJリース株式会社(注1)は、そごう横浜店(横浜市西区)で、 ICT(情報通信技術)を活用したCO2排出量取引(注2)の新たな取引手法に関する実証実験を、2月9日(木)~13日(月)に行います。
 本実験は、東日本大震災における被災地域を中心とした岩手県内から販売された排出権(J-VER)(注3)を10キログラムに小口化し、メッセージカード(以下 カード)に割り当てて販売するものです。その排出権は、復興支援団体の活動中に排出するCO2削減に利用できるようにし、復興支援と環境貢献を両立する新しい手法となります。
 なお、本実験は、総務省・ICTグリーンイノベーション推進事業(PREDICT)(注4)の予算により実施されます。

■背景
 東日本大震災における被災地域の復興を願うとともに、環境に対する取り組み意識は引き続き高くなっています。その復興支援と環境貢献を融合した新しい手法として、今回のCO2の排出権を割り当てたカードを開発・販売します。
 これまでNII、凸版印刷、日本ユニシスは、総務省・地球温暖化対策ICTグリーンイノベーション推進事業(PREDICT)の採択を受け、同事業の予算により、従来、1トン~1000トン単位で管理・売買されていた排出権を、セブン&アイ・ホールディングスと三菱UFJリースが小口化し、その排出権を簡易に譲渡・決済する方法について研究してきました。本実験は、その研究の成果を受けて、被災された釜石市など岩手県内の3森林整備事業に関わる排出権(J-VER)を、10キログラムに小口化した排出権をカードに割り当てて販売(売値100円)(注5)します。
 このカードに割り当てられた排出権は、復興支援団体に寄贈することができます。カードを受け取られた方は、携帯電話などから実験のために用意したWebサイトにアクセスし、複数の復興支援団体(1.きぼうの学校プロジェクト、2.プロジェクトNext、3.サンライス元気村プロジェクト)から支援したい団体を選びます。その結果、選択した団体は復興活動におけるCO2排出をオフセット(排出されたCO2を相殺)できるようになります。
 なお、本実験におけるカードは、ある種の排出権取引に相当するものとなります。それを一般の方に広く体験していただくことで、研究で提案している小口かつ簡易な排出権取引手法の有効性を検証しています。

■実証実験の案内
【実験日時・場所】
・販売期間 : 2月9日(木)~13日(月) ※Webサイト運営期間 2月29日(水)まで
・場所 : そごう横浜店(神奈川県横浜市西区) チョコレートパラダイス(8階催事場)
・販売商品 : バレンタイン用メッセージカード
【実施者】
・主催 : サプライチェーン環境貢献技術検討協議会
 NII、凸版印刷、日本ユニシス、セブン&アイ・ホールディングス、三菱UFJリース
・研究予算 : 総務省・ICTグリーンイノベーション推進事業(PREDICT)

【実験方法】
1.そごう横浜店チョコレートパラダイス(8階催事場)において、排出権10キログラムを割り当てたカードを販売します。
 このカードは購入されたお客様が、第三者にプレゼントとして譲渡することを期待しています。
2.カードを受け取ったお客様は、カードに記載したQRコードを携帯電話などで読み出すと、実験で用意したWebサイトにアクセスできます。
3.Webサイトからカードに割り当てられた排出権に関する情報を見ることができます。
4.同Webサイトから、3つの復興支援団体のうちひとつを選び、その団体に対して、カードの排出権を寄贈できます。

【排出権の寄贈先】
1.きぼうの学校プロジェクト http://kibounogakkou.jp/core/detail05.php
・・・気仙杉を使った復興ブランドの天然家具づくりプロジェクト
2.プロジェクトNext http://www.project-next.com/projectNext/Top.html
・・・東日本大震災の津波被害を受けた三陸沿岸への復興支援プロジェクト
3.サンライス元気村プロジェクト http://ishinomakizuna.net/project_sunrice.html
・・・仮設住宅にお住まいになっている1人暮らしのお年寄りにお米を届けるプロジェクト

なお、排出権は環境省により管理されている3つのCO2削減・吸収プロジェクトによるJ-VERを利用します。(1)岩手県県有林における森林吸収量取引プロジェクト(岩手県)、(2)釜石市緑のシステム創造事業(岩手県釜石市)、(3)三田農林株式会社 間伐促進型プロジェクト(岩手県盛岡市)を利用します。

■なぜ復興支援に役に立つのか
被災地域の復興活動を支えるには資金も必要です。このカードには被災地域を含む東北地方から販売された10キログラム分の排出権(J-VER)が割り当てられています。その排出権は東北地方の森林を整備・再生の活動資金になります。

■なぜ環境貢献に役に立つのか
カードに添付した排出権(J-VER)は森林整備活動の資金となっています。こうした取り組みを通じて排出権の需要を増やすことは森林整備を進め、森林によるCO2吸収を増やすことになります。また、今回、カードを受け取ったお客様は、排出権を復興支援団体の復興活動におけるCO2のオフセットに利用できます。


<上:図1>実験で使用するカード(左=外面、右=中面)
<下:図2>実験概要

■NIIおよび各社の役割
実証実験におけるNII、凸版印刷、日本ユニシス、セブン&アイ・ホールディングス、三菱UFJリースの役割は以下のとおりです。

・NIIは、本研究のベースとなる方法を提案しました(2010年11月24日報道発表)。その提案者である佐藤一郎(アーキテクチャ科学研究系教授)は本研究の研究代表者として、全体設計・スキームを担当すると共に、研究全般の統括をしています。
・凸版印刷は、実証実験のコーディネートおよび排出権取引システムの開発や本実証実験の事務局運営を担当します。排出権取引システムは、昨年度の研究成果であるCO2排出量が商品を通じて商品を販売した側から購入した側に移転するシステムをベースにして購入者とのインターフェース部分を拡張します。事務局運営では、受付から問合わせ対応、排出権償却の手続きまでの情報管理を実現しています。
・日本ユニシスは、排出権の口座開設および口座管理の実現モデルを構築します。今回の実証実験では、凸版印刷の排出権取引システムからデータを受け、本研究で必要なグラム単位の小口化された排出権の口座を開設し、引当や移転の機能を、口座管理の仕組み(取引に関するルール、情報システム)上で検証します。
・セブン&アイ・ホールディングスは、そごう・西武の協力の下に、実証実験の会場としてそごう横浜店を提供します。この実験を通じて店舗のお客様とともに被災地の復興と・環境意識の向上を目指します。
・三菱UFJリースは、オフセットプロバイダーとして東北地方の排出権を購入し、実証実験のための排出権を提供します。また、カーボンオフセットに関連する一連の手続きを行うとともに、復興支援団体にオフセット証明書を交付するなど、実験を通じて被災地の復興活動を支援します。

注1:国立情報学研究所、凸版印刷株式会社、日本ユニシス株式会社、株式会社セブン&アイ・ホールディングス、三菱UFJリース株式会社
国立情報学研究所(所長:坂内 正夫、以下NII)、凸版印刷株式会社(代表取締役社長:金子 眞吾、以下 凸版印刷)、日本ユニシス株式会社(代表取締役社長:黒川 茂、以下 日本ユニシス)、株式会社セブン&アイ・ホールディングス(代表取締役社長最高執行責任者:村田 紀敏、以下 セブン&アイ・ホールディングス)、三菱UFJリース株式会社(代表取締役社長:村田 隆一、以下、三菱UFJリース)

注2:排出権取引(Emission Trading)、排出権(Carbon Credit)、排出枠(Emission Allowance)
ベースラインクレジット方式とキャップアンドトレード方式に大別されます。前者は何らかのCO2排出削減活動に支援をして、その削減量の一部を排出権として売買できる経済価値として手に入れます。一方、後者では企業などは許容排出量を定め、それよりも実際の排出量が少なければその差分を排出枠として、逆に実際の排出が許容排出量よりも多くなった企業などに転売することを許します。なお、本研究はベースラインクレジット方式による排出権とキャップアンドトレード方式による排出枠の両方を扱うことができます。

注3:排出権(J-VER)
環境省による「カーボンオフセットに用いられるVER(Verified Emission Reduction)の認証基準に関する検討会」の議論におけるオフセット・クレジット(J-VER)制度に基づいて発行される国内における自主的な温室効果ガス排出削減・吸収プロジェクトから生じた排出削減・吸収量を指します。「オフセット・クレジット(J-VER)」はカーボンオフセット等に活用が可能で、市場における流通が可能となり、金銭的な価値を持ちます。そのため、「オフセット・クレジット(J-VER)」プロジェクトの実施者はこのクレジットを売却することにより、収益を上げることが可能です。そのため、これまで費用的な問題で温室効果ガスの削減を実施できなかった事業者や、管理が必要な森林を多く所有する地方自治体等にとっては、温室効果ガス削減プロジェクトの費用の全部や一部を、「オフセット・クレジット(J-VER)」の売却資金によって賄うことが可能となります。

注4:ICTグリーンイノベーション推進事業(PREDICT)
平成21年度の事業名は「地球温暖化対策ICTグリーンイノベーション推進事業(PREDICT)」。これは、総務省による競争的資金制度です。国際的に喫緊の課題である地球温暖化対策に資するために、CO2排出削減省エネルギー化に貢献する情報通信技術(ICT)分野のイノベーションを創出し、研究開発を促進していくことを目的としています。

注5:カードの販売価格
カードの販売価格は、協議会が試験的に設定したものであり、実際の排出権取引価格とは異なります。尚、カード販売の売上金は日本赤十字社東日本大震災義援金に寄付し、被災地域に還元します。

以上

ページの先頭へ戻る

Newsroom Search