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22 ヒロシマ・アピールズ2013 ポスター「夏の陽のまぶしさ」表情豊かな墨汁の再現〜

22 ヒロシマ・アピールズ2013 ポスター「夏の陽のまぶしさ」表情豊かな墨汁の再現

ヒロシマ・アピールズ2013 ポスター「夏の陽のまぶしさ」

 力強く大胆な筆線。ところどころ入る、薄墨の柔らかなにじみ。葛西薫氏が制作した今年度のポスターは、近寄ってみると、今にも湿った墨の香りがしそうだ。
 1983年より、毎年違うクリエーターが1点ずつ「ヒロシマの心」を訴えるポスターを制作し、内外に平和を呼びかけてきた「ヒロシマ・アピールズ」。「なん枚も描いているうちにさまざまな思いが押し寄せて、そしてこれ以上描けなくなった。」という葛西氏の思いが託された作品を忠実に再現するため、印刷にもどのようなこだわりが隠されているのだろうか。担当プリンティングディレクターの田中氏に話を伺った。

葛西氏の要望

  • 墨の微妙な濃淡を活かしたい
  • 墨たまりの表現はやりすぎず、不自然にならないように
  • 贅沢なものではなく、素朴な作品にしたい
原画

原画

拡大図

拡大図

墨汁らしさとは

3版設計

 今回、葛西氏が求めたのは墨汁の調子を最大限引き出したスミの表現。大変シンプルな構成のイラストレーションなだけに、どのように印刷設計していったのだろうか。
「まず、墨の力強い発色を出すため、スミ版2種で設計しました。また、墨汁の特徴の一つは、筆が止まったところに見られる墨のたまり部分。この特長を再現するため、たまりの部分のみのシメ版をさらに作成しました。これはスミにグロスニスを50%混入して刷り、墨の表面に浮かぶ、てらっとした膠っぽいたまりのような表現を狙います。」

3版設計

3版設計

特色設計

初校

 インキはレギュラースミ、スーパーブラック(女神インキ)、スリーエイト(東京インキ)の3種で試す。同じスミでも、スーパーブラックは微妙に赤みがかった印象、スリーエイトは青みがかった印象が特長。
 また、紙は風合いのあるヴァンヌーボF-FSとダイヤペークの2種で校正を出した。ヴァンヌーボはドライダウンしにくく、少しクリーム色っぽい。ダイヤペークの方が白さが強く、スムースな質感が特長である。斤量もヴァンヌーボが180kgと150kg、ダイヤペークが180kgと135kgと2種類ずつ試した。

インキの違い

インキの違い

グロスニスの違い

グロスニスの違い

初校を見て

「とにかく驚きました。スミ2色だけで墨汁の濃淡がしっかり出ていて、これで充分!と思いましたが、さらにニスが入ったものを見ると、描きあがった直後に近い印象があって嬉しかったですね。元々、たった今筆でぱっと描いたような生々しさを感じて欲しいと思っていたんです。しかし豪華なものではなく、素朴な作品にしたかった。それを見事に表現してくれました。」(葛西氏)

「葛西さんの要望の『素朴さ』を出すため、このグロスニスにはスミも混ぜています。グロスニスだけにすると『とってつけた感』というか、わざとらしい印象が出てしまうかと思い、現場で色を決めました。いい具合に出てくれたと思います。」(田中氏)

再校

再校では、インキをスーパーブラックとスリーエイトに絞り込み、濃度をさらに調整したもので用紙は2種出稿した。
「満足な仕上がりでした。でも紙は最後まで悩みましたね。原画が真っ白な紙に描いていたので白色度の高いものをイメージしていたのですが、最終的には素朴な印象のあるヴァンヌーボF-FSに決めました。嬉しい迷いでした。」(葛西氏)

仕上がり

版の構成と刷り順

スミ1(女神)×スミ2(女神)×特グレー(スミ50%+グロスニス50%)

仕上がりを見て

仕上がりを見て

「墨の艶やかなたまりも感動しましたが、筆のかすれた細い線が何度見ても飽きません。筆は書道用のものではなく水彩用の海外のバサバサしたものを使っていますが、それがまさに出ていますよね。
今回は『肉体感』を意識して、筆につける墨の量や描くスピードを変えて何十枚も描きました。その中から選んだ原画を入稿して、出校された時、B1サイズに大きくなって、初めて『完成した』という印象があって感動しました。
最近は活字を配置したデータで入稿することが多いですし、ディレクターとして細やかな設計はデザイナーに任せることも多くなっている中で、久しぶりに若い頃の気分を味わせていただきました。やはり単純素朴なものはいいですね。」(葛西氏)

 今回、墨の調子を追いかけた結果、このように細かな技が要所要所に使用された。たかがスミ、されどスミ。同じ黒色でも数限りない、様々な黒が見て取れる。原作の思いを担った、奥深いポスターに仕上がったのではないだろうか。

ヒロシマ・アピールズ2013 ポスター「夏の陽のまぶしさ」

サイズ
B1

インキ
特スミ/グロスニス

用紙
ヴァンヌーボF-FS ホワイト 四六判180kg

スクリーン線数
175線

アートディレクター
葛西 薫

プリンティングディレクター
田中一也

製版
株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ

主催
公益財団法人ヒロシマ平和創造基金
一般財団法人広島国際文化財団
公益社団法人日本グラフィクデザイナー協会(JAGDA) 広島地区

協力
株式会社竹尾
凸版印刷株式会社

制作年
2013年

【取材協力】
田中一也
凸版印刷株式会社
情報コミュニケーション本部グラフィック・アーツ・センター

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