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GRAPHIC TRIAL 2014 ギャラリートーク 南雲暁彦×ニコライ・バーグマン

「GRAPHIC TRIAL 2014 ―響。―」に参加した南雲暁彦さんと、ゲストとしてニコライ・バーグマンさんを招いたギャラリートーク。(於:印刷博物館 P&Pギャラリー、2014年6月20日)

「GRAPHIC TRIAL 2014 ―響。―」のギャラリートーク第2弾は、世界中を駆け巡って風景を撮り続けているフォトグラファーの南雲暁彦さんです。ゲストにはトライアル作品でコラボレーションをした、フラワーアーティストのニコライ・バーグマンさんをお招きしました。デンマーク生まれのニコライさんは来日以来、日本を拠点に活躍し、現在ではフラワーデザインにとどまらずファッション、インテリアと数多くのプロジェクトにも参加されています。今回はギャラリー内に4Kの大型モニターを設置し、ハイビジョンの4倍という高解像度の画面でお二人の作品や、コラボレーションされたムービーをご紹介していただきました。

写真とフラワーデザイン、それぞれの仕事

最初に、普段はどんな仕事をしているのかをお二人に伺いました。まずは南雲さんから。トッパンの筆頭フォトグラファーとして、カメラやプリンターの販促用のイメージカットや写真集のための撮影、制作をしています。

南雲
今回の作品をつくるにあたって、使用した写真は新しいデジタルカメラを発表するときに配信する、「チャンピオンデータ」と呼ばれる作例用に撮影したものが中心です。世界中で多くの人が目にするものになるので、日本での撮影だけなく、ここ10年で150都市くらい、世界の様々な場所でも撮影をしてきました。 撮影場所もこちらで探したりします。「次はこういうカメラを発売します」というオファーがあると、それに対してプロモーションを考え、季節やタイミングが一番適した土地を探し、そのカメラのスペックに合わせて写真を撮っていきます。 (作品を見ながら)こうやって改めて見ると、撮ったときの感情を思い出します。天気のいい写真ばかりお見せしていますが、実際は曇りや雨のこともとても多くて、ずっとチャンスを待ちながら苦労してやっと撮れたものばかりです。1回のロケはだいたい2週間ですが、撮れなければ延長して撮れるまで帰りません。1か月近くロケを延長したこともあります。とにかくロケ期間中に、そこに住んでいる地の人にも負けないようなものを撮らなければなりません。ですからものすごく細かく計画を立てて、なるべく天気など条件がいい時期を選んで出かけているんです。

次はニコライさんです。花の卸業を営んでいた父の影響もあって子どもの頃から花が好きだったというニコライさんは16歳から花の勉強をはじめました。20歳で来日、それ以来日本を拠点に活動しています。

ニコライ
日本には98年から来ましたので、もう15、6年になります。デンマークではフラワーショップでも他の仕事でも、勉強をして免許をもらうというシステムがあって、私は19歳で花を扱う免許をとりました。その頃すでに、フラワーショップを出すことが私の夢だったんです。そんな中、父に「どこか別の国も見に行ったら」と勧められ、少し縁があった日本に「ちょっと行ってみようかな」と軽い気持ちで行くことにしました。「もともと日本に興味があったのですか」と聞かれることも多いのですが、正直、その頃はあまりなかったんです。日本に来てから興味を持って勉強して、楽しいこともたくさん経験をしてきました。
フラワービジネスの会社を立ち上げてから、来年の3月で10年になります。最初は骨董通りの小さなお店に所属していました。そこから次第に仕事が広がっていき、現在は独立してフラワーショップ4店舗、インテリアショップやカフェ、ホテルのフラワーショップ、そしてプロダクトデザインやグラフィックデザインもやっています。身一つで日本に来ましたが、頑張ってなんとか自分の小さな世界をつくりあげることができました。 (フラワーボックスのスライドを見ながら)爆発力があるアイテムというのは意外と偶然から始まったりします。このボックスも、ショップも始めたばかりの頃、来店した美しい女性に突然、600個のプレスギフトが欲しいと言われ、一生懸命アイデアを出してひねり出したものです。条件として重ねられなければならないし、ブーケを箱に入れる予算もなかったことから、直接箱に入れることを思いついたのです。そうして無理矢理考えたアイデアから人気商品が生まれました。

出会いからその次へ

それぞれ自分の道を突き進んでいたお二人が、どうやって出会ったのでしょうか。馴れ初めをお聞きしました。

南雲
フォトグラファーは被写体ありきの仕事ですので、いろいろな人とコラボレーションする機会も多く、アーティストの方との出会いも比較的多いんです。ニコライさんとの出会いは日産のカレンダーがきっかけでした。


2014 NISSANカレンダー

南雲
「こういう話があるのですが、やっていただけませんか」とラブコールして快諾いただいたのが初対面です。最初はどんな人だろうかと、かなり緊張しましたね。でも、ものをつくる者同士の“響き”のようなものがすごく合ったのだと思います。とてもやりやすかったし、本当にいい方向に進むこともできました。彼はスタッフに任せず、最初に自分がやり始めるし、自分が一番動くんです。そのフットワークが一緒にやっていて、とても気持ち良かったですね。ロケで、スタジオで、その場で「こうしたらいいんじゃないか」と相談しながらつくれたし。
ニコライ
最初は、クライアントも大きいし、イベント会社も入っているし、大人数のボードミーティングのような感じから始まって、かなり圧倒されたんです。15〜6人でいきなり来るし、かなり硬い感じだったのですが、何回も会っているうちに空気が軽くなって仲良くなってきて、プロジェクトもどんどん楽しくなっていきましたね。
南雲
ニコライさんは当時からもう既に有名な方でしたが、最初から「どうしたらいい?」「どうしようか」ときっかけを自分からつくってくれて。
ニコライ
自分がポジティブに制作にチャレンジしていけばもっと良いものが生まれてくると思うし、そのやり方自体が好きなんですよね。
南雲
天気や場所、その他いろいろな状況があったり、ハプニングがあるのも撮影の面白さだと僕は思っています。臨機応変に如何にやれるか、そこから考えてもっといいものをつくっていけるか。そういうチームになれるかはすごく重要ですね。今回はすごくよかったです。
ニコライ
この仕事が終わって、それがまた次の仕事につながったというのも最高でしたよね。このあと何回も一緒に仕事をしているし。
南雲
人がつながるというのは財産ですよ。一緒に仕事をして「この人はいい男だ!」「他で組まない手はない!」と思って、すぐに次の仕事でムービーの主演をお願いしました。その流れで、この「GRAPHIC TRIAL」もぜひお願いしたいと思いました。
それに実は僕にとって、ニコライさんがカメラが好きだということもとても重要なポイントでした。しかも、撮影が上手いんですよ、ニコライさん。(笑)


キヤノン EOS スペシャルムービー

カメラと花で思い描く“地球”をつくる

ここから話題は今回の「GRAPHIC TRIAL」に転じました。

南雲
今回、僕はフォトグラファーとして、自分が撮ってきた風景がどこまで印刷で美しくなるか見たいと考えました。大量生産の為のテクノロジーである印刷は、概して写真そのものに比べると解像度も低く、色も浅くなりがちです。そこで印刷を極限まで突き詰める「GRAPHIC TRIAL」で挑戦することにしたんです。今まで撮りためてきた中でも色が表現しにくい写真を選び、地球の鳴動や息吹のようなものが感じられるように仕上げてやろうと思いました。それを単に「風景が並んでいる」ではなく、一歩進めて「地球の風景が並んでる」作品群にするために地球のアイコンをつくることにしました。写真がすべて自然物の写真なので、地球も自然のものでつくろうと思った時、「あ、いい男がいるぞ」と。
ニコライ
それで今日、ここに一緒にいるわけです。(笑)
南雲
そうなんです。この写真はフォトショップの合成で丸くしたわけではありません。丸く写る魚眼レンズで一発撮りしています。背景には実際に撮影したオーロラを敷くような形で合成しています。
ニコライ
最初に魚眼レンズで撮ると聞いたときは、「小さな作品をつくればいいだろう」と思ったのですが、実際に南雲さんにレンズを借りて試してみたら、小さいと全然形にならないんです。しかも画面を見ながらつくらなければならないし、ただのフラワーアレンジメントではいけないんだと思いました。結局、時間の都合もあって、現場でつくることになったのですが、行ってみると2m×2mくらいのスペースが用意されていて、その20cmくらい上にカメラが設置されているんです。どこに花を挿していいかわからないという状況で、それは今まで経験したことのないものでした。まさに「画面 VS フラワーアレンジメント」という感じでした。四角い箱に挿しているのに、画面で見るとまんまるに見える。実際につくったものと、画面で見えるものが違うんです。本当に不思議で、でもすごく楽しくて、最終的にも面白い雰囲気が出たのではないかと思います。


グラフィックトライアル作品 撮影の様子


完成した作品

南雲
地球をイメージしていたので、花は白、グリーン系、ブルー系のみでお願いしました。真ん中に向かって陥没している大きな四角い箱庭に、大人二人が花を挿しながらああだこうだとやっているわけですから、傍から見たら「何やってるんだ」という感じですよね。(笑)結果的にはすごく満足できる地球が出来あがり、ニコライさんには本当に感謝しています。
ニコライ
本当にいい経験をさせていただきました。撮影といえば大概は普通にフラワーアレンジメントをつくる事が多いのですが、レンズがフィッシュアイなので、目で見るのとは逆の雰囲気をつくらないと丸く見えないというのがあって。初めてのチャレンジでしたね。

自然の流れの中で、今、自分にできることを

それぞれジャンルは違ってもものをつくる喜びや楽しさに違いはないようです。お互いの仕事に対する思いや今後についても話は尽きることがありません。

南雲
僕はいつも撮影のとき、”待てる喜び”をすごく感じるんです。朝と夕の一瞬しかコントラストがつかない砂漠や、いつ出現するかわからないオーロラをずっと待っていたりします。普通の観光だったらそんなことはあり得ないですよね。「はい、30分後にバスが発車します」という状況ではほとんどいいものは見ることができない。でも、僕は僕のためのチームがあってロケバスがあって最新鋭のカメラがあり、撮れるまでそこで延々と待てる。“待つ幸せ”がある。「待つのは大変でしょう」とよく言われますが、実はそれが一番の幸せなんです。
ニコライ
その気持ち、よくわかります。
南雲
ものをつくっていると、そういう気持ちってあるでしょう?
ニコライ
高いレベルのフラワーデザインになると、細かく同じものをずっとつくり続けられる人と、それがなかなかできない人の二つに分かれます。私は後者のほうでサクサクつくるのがすごく好きですね。早くやらなければというプレッシャーの中で、楽しく新しいアイデアを出していくというつくり方が好きです。フラワーデモンストレーションでも、最初の頃は緊張していて、やる事を全部決めてやっていましたけれど、何度も何度もやってきた今では、皆さんの目の前にいるというプレッシャーの中から面白いものが生まれてくるということが好きになりました。今はむしろ何も決めないでその場でつくるのが楽しくて、ハマっています。それって、同じプレッシャーですよね。だから十数時間も同じ場所で待っていて、一瞬しか撮れないというのがわかります。「なにも撮れないで帰ってきました」とは絶対言えないし。
南雲
プレッシャーは確かにあります。それを楽しめるかどうかもあるけれど。
ニコライ
それはいいものをつくるには絶対必要なことだと思います。
南雲
そうですね。それがないと張り合いもない。プロフェッショナリズムのようなものがそれを支えている気がします。

二人にとっての「これから」

最後に、お二人の現在の仕事、今後について考えていることを語り合っていただきました。

ニコライ
昨年11月から『FUTURE BLOOM』という雑誌をつくっています。花をメインに気持ちを伝え、自分のフィーリングを皆さんに感じてもらいたいと思ってつくりました。今は花業界でも、少しずつ季節がわからなくなってきています。そういう季節感をはっきりさせたいという思いもありました。花のほかにも自然や料理など、自分の興味があるものをいろいろ取り上げています。 “花が好き”からスタートし、最初はただのフローリストとして始めましたが、ここ2〜3年はデザインのことも色々やるようになってきました。この秋にはイタリアのブランドから私が花のデザインをしたバッグが発売されるなど、今は花を通して幅広くデザインに取り組んでいます。自然の流れを大切にしながら、少しずつ花を通じたデザインの経験も増やしていきたいと思っています。
南雲
今の時代にフォトグラファーは何をすべきなのだろうかと、いつも考えながら仕事をしています。もちろん好きだからとか自分の為にということはありますが、何よりフォトグラファーは撮った写真を人に見せる仕事だと思うのです。僕は「見たい!」という視覚欲がとても強くて、中でも一番強く思うことが「世界中の見たことがないものを見たい」という気持ちです。それを見たことのない人たちに見せたいと思いながら写真を撮っています。今回の作品では「こんなに地球はきれいなんだから大事にしようよ」という思いでつくりました。来月もほとんどロケで海外に行きます。身体が動くうちは体当たりしながら写真を撮っていきたいと思っています。

出会ってから、お互いの仕事やストーリーに触発され続けてきたというお二人。今回のトークの中でも、「これ、今度南雲さんに撮ってほしい」「僕、今、ニコライさんとご一緒したい新しい企画ができました!」と、コラボレーションの種が誕生しているようでした。ここでしか聞けない話、見れないビジュアルが満載のトークイベントとなりました。

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