TOPPAN 凸版印刷株式会社

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デザイントーク in TOPPAN vol.4 「ブックデザインにおけるフォント活用とDTPの今」

今回は書籍づくりに携わる皆さんに、DTPの考え方と実践を語っていただきました。

  2007年11月11日、印刷博物館グーテンベルグルームにて、第4回となるデザイントーク in TOPPANが開催されました。パネラーとしてお集まりいただいたのは、講談社BOX部長で、文芸誌『ファウスト』などの編集者として活躍している太田克史氏、ブックデザインの分野で意欲的かつ斬新な活動を展開している祖父江慎氏と坂野公一氏、印刷会社のディレクターとしてDTPの普及に努めている紺野氏の4名です。DTP の技術を積極的に活用しながら「美しい組版」や「内容に相応しいフォント」を追求している彼等に、デザイナー、編集者、フォントディレクターそれぞれの立場から“文字”にまつわるお話を中心に伺いました。

   まずは今日までのDTPの流れを概観します。DTPという言葉が生まれたのは1985〜6年ごろ、実際に普及し始めたのは95年以降のこととされています。パネラーの方に当時のことを伺ってみました。
「最初はフォントはリュウミンだけ、組みもいまひとつで使えないし、電算写植のほうが美しいと思っていました。それがいつの間にかDTPで作業するようになっていました。」(祖父江氏)
  「学生時代に既にPageMakerなどはありましたからなんとなくDTPの存在は知っていましたが、環境が整ってきたとはじめて思ったのはモリサワのフォントが登場してからでした。」(坂野氏)
  「入社当時はDTPは言葉として知っているだけ、そもそも校了後の印刷工程は僕ら編集者にとってはブラックボックスのようなものでした。」(太田氏)
  今では数多くあった制約や制限もなくなり、使い手の要求にハード・ソフトの両面から応えられるほどになってきた、と言います。もともと「自分の情報を自分の思うままに誰の手も煩わせることなくかつ低コストで加工するための道具」として発想されたのがDTPでした。当初は「コストや効率化を図る生産システム」として利用されていましたが、最近は「自分のやりたいことを実現するためのシステム」として定着しつつあるとパネラーの方は考えているようです。

  次にDTPとの出会いを伺うことに。編集者としてDTPによる書籍づくりに取り組んできた太田氏は、京極夏彦さんの担当編集者だった時にDTPと出会い、その後、作家ごとに書体や組版が違う文芸誌『ファウスト』を編集しています。
  「単に読むだけのものとして小説を捉えるのならば、テキストデータだけで事は足ります。しかし小説は読み手がいて始めて成立するものです。“読む&ldという再生環境を整え、高めるのがデザインワークだと思います。音楽を聴くにも、クラシックとJAZZではスピーカーやアンプの環境を変えるほうがいいでしょう?」(太田氏)

▲ 太田克史氏

▲ 祖父江慎氏

  書体といえば、ずっと苦労してきたというのが祖父江氏です。
  「デザイナーがぜひ使いたいと思って指定しても、その書体を印刷会社が所有していなければ実際に使えなかったり、いろいろ制限も出てきます。しかもカタカナと平仮名で書体を変えたい、文字ごとに書体や大きさを変えたいなんて、電算写植ではものすごい大変なことでした。それがDTPでは簡単にできるでしょう? すごいですよね。」(祖父江氏)

  とは言え、実現のためには印刷会社サイドとの細かな連携がとても重要になります。
  「本来はそうしたデザイナーの要求や動機を増幅していけるものがDTPだったはずなのです。ところが残念なことに『あれはダメ、これはダメ』と印刷サイドから制限を設けてしまうことが多いのが現実ですね。それがDTPを単なるプリプレスのシステムのように見せてしまってきた原因のひとつでもあります。」(紺野氏)

▲ 紺野慎一氏

▲ 坂野公一氏

  祖父江氏や坂野氏のように書体や組版を自在に変化させたいと考えるデザイナーと、DTPを積極的に活用したいと思う印刷サイドの人間が出会って、初めてDTP本来の良さが生きてきます。しかし、自由さは混乱の要因になっているという意見も。また、デジタル化によって全体水準は上がったものの突出したデザインが登場しなくなった、との声もあがりました。
  「それはDTPが悪いのではなく、使う側の問題だと思います。確かに今はまだデジタル化を充分に生かしたものが登場していないかもしれませんが、それは時とともに変わっていくんだと思います。そのうちコンピュータオンリーの世代からデザインの新しい標準が出てくるのではないでしょうか。」(坂野氏)

  ここからは祖父江氏や坂野氏の仕事を見ながらのトークです。IllustratorやQuarkXPressで制作していた時代からInDesignによるDTPの世界へとの変遷が次々と映し出されていきました。
  祖父江氏の組版の指定紙や、はじめてDTPを使ったものなど思い出深い仕事から、ボツになったデザインまで登場。「ここだけの話ですけれど…」と繰り出されるエピソードに会場は一気に盛り上がります。一方、坂野氏は自身の作品を使いながらいろいろな裏ワザを披露するなど、実践的なトークを展開。実際のデータをリアルタイムで操作しながら構造を具体的に解説していきます。さらに「InDesignは実際のデザインだけでなく、自分のテンションを上げられるためにも使えます」(坂野氏)と、作業環境を楽しくするための工夫も紹介してくれました。

  そして、来場者に向けてパネラー全員からメッセージが送られます。
  「きっちりとした動機があればDTPはそれに応えてくれます。DTPのポテンシャルを更に高めるためにも、積極的にコミットしてデザイナーや編集者の方々に正しいDTPの可能性を享受してもらえるよう頑張っていきたいと思います。まだまだDTPでできることはたくさんあると思います。」(紺野氏)
  「誰もが祖父江さんや坂野さんのようなプロ中のプロと同じ環境を100万円足らずで手に入れることができるなんてすごい時代になりました。今日会場に来てくださった方々と、いずれどこかで仕事ができたらと願っています。」(太田氏)
  「こんなに便利になってはいますが、現場はそううまくはいかないのが現状です。よおし! ってはりきって買ったフォントが使えないとか、つらい状況もたくさんあります。でもこれからどんどんよくなっていくんじゃないのかな……って、未来に期待を込めたいと思います。希望があるのなら、実現するために向かっていくのはとてもいいことだと思います。たまにあきらめも必要な、ちょっとサビシイこともありますが……。とにかくがんばって!」(祖父江氏)
  「手持ちの環境では無理だからと適当にしてしまったり、やめてしまったりするのではなく、新しいことに手を出していくほうがいいと思います。お金の問題もありますが、食わずぎらいにならないこと。いろいろやってみることで自分の表現も開けていくので、積極的に取り組んでいただきたいと思います。」(坂野氏)

  最後に来場者の方々からの質問を受けてトークイベントは終了しました。リアルな現場の話に大幅に時間も延長し、活気に満ちた2時間半となりました。

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