TOPPAN 凸版印刷株式会社

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デザイントーク in TOPPAN vol.3「GRAPHIC TRIAL 2007 参加クリエイターが語る印刷表現の追求」

グラフィックトライアル2007と印刷表現の追求について語っていただきました。

凸版印刷の印刷博物館P&Pギャラリーにて開催された「GRAPHIC TRIAL 2007」。昨年に引き続き、アートディレクターたちがオフセット印刷による新しい表現へと挑みました。その参加クリエイター4名をゲストに迎えたトークイベント「デザイントーク in TOPPAN vol.3」が6月16日、印刷博物館内グーテンベルクルームで幕をあけました。澁谷克彦氏、服部一成氏、平林奈緒美氏、青柳雅博氏の4名が今回のトライアルについて活発に語り合いました。

まずは澁谷氏のトライアルから。「『白』をふくらませる。ホワイト版」をテーマに取り組んだ澁谷氏の作品は、肌、花、石膏像、蜘蛛の巣、戦闘機と、それぞれ質感の異なる白いモチーフを使った5枚のポスターです。
「ふつうはインキののらないところが紙地を生かした白になるけれど、今回は逆の発想でやってみました。はじめに紙に胡粉をひいて『白』をつくる日本画のように、印刷インキでつくる白の可能性を探ってみました」
と語る澁谷氏は、資生堂のアートディレクターという仕事柄、女性の肌の表現を追求し続けてきた方です。白く輝く美しい肌を表現するためにプロセス4色プラス特色というインキセットによる印刷はかなりの経験を積んできたものの、白のインキ中心での印刷表現ははじめてだったとか。今回のトライアルで1枚1枚違う面白さが発見できたという澁谷氏、5枚それぞれに異なるベクトルが発見できて、5つの方向にシリーズが広がっていきそうな予感がするとのこと。
「印刷って版画なんだな、ということを思い出せました。『刷る』って面白い、そこから印刷を改めて考えていこうという気になりました」

▲ 左より澁谷克彦氏、服部一成氏

次は服部氏です。「CMYK4色の線のかけ合わせで」をテーマに、本来は『網点』で表現する色面を『線』で表現することに挑戦したポスターを制作しました。
「印刷の仕組み自体が表現になったら面白いなって思ったんです。これまでずっとプロセス4色の印刷だけで何か面白いこと、新しいことをやろうと仕事をしてきたんだから、この作品も印刷の基本を使ってなにかできないかな、と考えてみました」
ヒントになったのは、ポスターの分色刷りをモチーフにデザインされた横尾忠則さんの東京国際ビエンナーレの図録、4色分解の版それぞれに手を加えて再構成した細谷巌さんのポスター作品、カラーコピー機によるデビッド・ホックニーの版画的作品だったと服部氏。アイデアを実際に校正刷りして試してみる前に、カラーコピー機と手描きで相当量の試作をしていたといいます。そして、実は入稿の数時間前まで、最終作品とは異なる原稿を用意していたという裏話まで暴露するという一幕も。
「僕らはいつも印刷の仕上がりを頭で考えていますよね。でも、紙ひとつで発色や質感が変わってくる。印刷物って『モノ』なんだなと再認識しました」

そして平林氏。「オフセットでPOP ART」をテーマに取り組んだ作品は、以前から収集していた印刷物を切ってコラージュした原稿を使いながら、オフセット印刷ならではのハプニングを起こそうとしたものでした。
「せっかくだから印刷前にシミュレーションできないことを実験しちゃおう、って。今は制作時にモニター上でほとんどシミュレーションできてしまうんですが、昔、版下で入稿していた時には仕上がるまで確認できなかったことがたくさんありましたよね。そんな状況をつくってみたかった」
分版ごとの線数違いや版ズレなど、普段はやれないことをいろいろ試したという平林氏。ハプニングを楽しみたいからと版ズレの角度や幅を現場まかせにしたいと注文、現場が困ったあげく、結局プリンティングディレクターが指示を出したというエピソードが語られました。
「面白かったですよ。今となってみると、もっととんでもないことをやっても良かったかなとも思うけど、その時はこれ以上はコワかったんですよね。発見もありました。版によって線数を変えるなんて初めてだったけれど、普段の仕事にも使ったら、きっと面白いだろうと思いました」

▲ 左より平林奈緒美氏、青柳雅博氏

最後が青柳氏です。「重ねてつくるイロ・カタチ」をテーマに、CMYKが重なりあいながら多様な色を再現しているさまを、5枚のポスターの中にモザイク上に表現した作品です。
「はじめはCMYKを何回も重ねていく方向で考えていましたが、意外とがっかりな結果だったんです。それで原点に戻って、ふだんは目にする機会がほとんどない分版の様子を一目で見られるようなものにしようと思って」
という青柳氏。それに対し、「僕はCMYKをそれぞれ2度刷りした8版重ねの“どぎつさ”がすごいなと思ったんだけど」という服部氏、「モニターでは確認できない4版全てをスミで刷ったものが面白かった」というプリンティングディレクターなど、参加者がそれぞれ感想を述べあう場面も。ゲスト達がお互いの作品や実験から、それぞれ興味のあるポイントを自由に突っ込みあうトークは、観客にも色々な表現のヒントを提供してくれたようです。
「スミ4色だと自然なモアレができてキレイでしたね。あとCMYKで刷った上から銀を刷ると下色が調子版の役割をしてくれるというのも発見でした。はじめて知ることも多かったトライアルになりました」

ここからはフリーセッション。
「それぞれがもっていた印刷へのこだわりの部分がそのまま作品に出たという感じ。難しかったけど面白かったな。やってよかったですよ。皆で一緒にやるというのも楽しかったしね」と服部氏。
「印刷物はもともと好きだけれど、『そうか、私ってオフセット印刷をここまでは知っていなかったんだな』と感じ入った」という平林氏。
普段はモニター上で見て判断をしていても、実際に印刷になる段階でいろいろな要素が入り込んで、表現に大きな幅が出てくるんだということをトライアルによって再確認できた、とのこと。
「自分たちが何をやろうとしているのか、ちゃんと伝えることが大事だと思った。『オフセット印刷』という漠然とした題目には悩んだけれど、難しければ難しいほどいろいろ考えるでしょう? 他の人の考え方やプロセス、結果を知ることはタメになったね。結果として、印刷だけでなくデザインについても本質的なことを考えさせられました」と澁谷氏。
テーマをしっかり設定しながらも実験で終らせず、自立した作品に仕上げるために各人、人知れず骨を折ったことが伝わってくるセッションでした。
最後に就職を控えた学生や、デザイナーの方、一般の方などから質問が飛び交うなか、フレンドリーな熱気に包まれながらトークショーは幕を閉じました。

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