TOPPAN 凸版印刷株式会社

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デザイントーク in TOPPAN vol.2 「オフセット印刷表現の可能性」(第1回)

グラフィックトライアル2006とオフセット印刷の可能性について語っていただきました。

2006年6月24日(土)、凸版印刷の印刷博物館において「デザイントーク in TOPPAN vol.2」を開催しました。これは、同博物館P&Pギャラリーで開催中の企画展「グラフィックトライアル2006」に参加した鈴木守氏、伊藤桂司氏、澤田泰廣氏の3名のクリエイターをゲストに迎え、「印刷表現の追求」をテーマに、自らのトライアルとオフセット印刷の可能性について語っていただくトークイベントです。

まずはゲスト3名の代表的な仕事を紹介しました。イラスト、写真、タイポグラフィーと幅広い素材を自在に駆使しながらウィットに富んだ鈴木氏の作品。コラージュの手法をベースに、作品ごとに新しい世界を見せてくれる伊藤氏の作品。さまざまな素材をモチーフに、シンプルかつ大胆なミニマルな表現へと落とし込んだ澤田氏の作品。当時のエピソードを盛り込んだ解説に、三者三様の表現スタイルとアプローチを垣間見ることができました。

▲ 右より、澤田泰廣氏、伊藤桂司氏、鈴木守氏

▲ トークショー会場風景

その後、いよいよ話題は「グラフィックトライアル2006」へ。それぞれの制作過程と作品を見ながらトークが展開していきました。
最初は鈴木氏。「自分も凸版印刷も嬉しくなれて、印刷業界に関わる人たちがみんな喜んでくれる、そんな作品にしたかった」と作品にこめた思いを披露してくれました。「いちばん面白かったのが、テスト刷りを見る時。どんなトライをしてくれたのかな、今度は何が出てくるのかなと、毎回ドキドキワクワクで、校正を前にした時の緊張感や驚きを久しぶりに味わいましたね」(鈴木氏)鈴木氏がトライアルしたテーマは「光」。版画の雲母刷り(きらずり)のような表現ができればと思っていたといいます。トライアルの過程では、「粗い質感で」とか「もっとキラキラと」といった抽象的な指示をしたり、わざとRGBのデータで入稿したり、こういう曖昧な部分をつくることで凸版印刷のスタッフとの共同作業ならではの創造性を重視したという。その結果、自分自身の勉強にもなって、今後に生かせるデータを得ることができたとのことでした。

▲ 今回のトライアルについて語る鈴木氏

▲ 今回のトライアルについて語る伊藤氏

続いて伊藤氏。
「こんなことをやってみよう!」的なトライアルをめざして、着地点が見えない状態でスタートしたとのこと。「もともと印刷物は重層的なもの」と考えていたことから、今回は数ミクロンのインキの皮膜の中で起こるスペクタクルに着目して作品に取り組んだそうです。
「何よりうれしかったのが大量の色校。予想以上の効果があったり、思いもしなかった表現になったり・・・。バリエーションが多すぎて、かえって整理がつかなくなって困ったんですよ」(伊藤氏)
結果については、「最初のイメージからどんどん広がっていって、結果には大満足。制作の意図も100%以上のものになりました」と成果を強調。このトライアルで得たものを早速仕事でも試していきたいという伊藤氏の、これからの作品が楽しみです。

最後に澤田氏。
「普通ならオフセット印刷では決してトライしないような、不得意な領域をわざとやってみよう」とスタートしてテストを重ねた結果、極端なグロス表現を追求することへと徐々に変化して作品が完成したと語りました。
「発見することの楽しさ、驚き、感動。そんな感覚を思い出せるトライアルになりました。ニスに機能系添加剤を混ぜるという思いもよらない実験ができたことで、ニスに対する新しい視界が拓けそうな手ごたえを得た」(澤田氏)
「もしまた機会があれば、普段は失敗として片付けてしまうようなモアレ、版ずれ、カスレなどのマイナス要素にチャレンジしたい」とのことでした。

▲ 今回のトライアルについて語る澤田氏

終盤に近づくと、話題は日々のクリエイティブを通して感じている「印刷」に関する話へ。
ここ10年で印刷の精度が格段に進歩したおかげで、「安定したクオリティを求められる仕事には適している環境になった」という鈴木氏をはじめ、皆さんともにかなり評価していることがわかりました。その一方で、仕事の現場で新たなトライのきっかけが減ったという指摘も。

「印刷のクオリティは、今はほとんどが95点。大きな失敗がないかわりに120点もない」(鈴木)
「データどおりに仕上げるというシステマティックな考えに問題がある気がする」(伊藤)
などの言葉に象徴されるように、均質化しているように思える印刷物は少々物足りない、というのが実感なのかもしれません。
「基本に忠実に、クオリティを守ったうえで、印刷会社からトライの提案があると面白いですね」(鈴木)
「紙を提案してくれるように、印刷の方法もいろいろ提案して欲しい」(伊藤氏)
入稿作業が単なるデータのやりとりに終ったほうが仕事としては効率的かもしれないが、よりよいものをつくるためにはもっとコミュニケーションが必要だというのが3名の共通した意見でした。

「最終的には自分の考えているデザインを印刷で形にする僕らにとって、印刷サイドと僕らが常に話せる状況にあることはすごく大切なことだと思う」(澤田氏)
「たとえばプリンティング・ディレクターがいると、構想時の打ち合わせ、入稿時、色校時と打ち合わせは多くなって手間もかかるけれど、絶対に楽しいし、想像以上の印刷物ができたりします」(鈴木氏)
印刷の現場がデジタル化され、高度なシステムが確立されつつある今だからこそ、クリエイターと印刷会社とのコミュニケーションの重要性や、セッションのように高めあえる関係が求められているのかもしれません。

最後に、この道を目指している学生の方々に向けて、それぞれがグラフィックデザインの道へ進むことになった経緯を披露。それぞれに自分史の1ページを本音を覗かせながら語っていただき、トークショーは幕となりました。

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