TOPPAN 凸版印刷株式会社

当サイトは、コミュニケーションメディアのひとつである印刷表現の幅を広げ、クリエイティブに役立つ情報を発信するウェブサイトです。凸版印刷のグラフィック・アーツ・センター(GAC)が運営しています。

GRAPHIC TRIAL グラフィックトライアルトップクリエイターとともに印刷表現の可能性を探ります

GRAPHIC TRIAL 4.トライアル3-阿部拓也
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トライアル3
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インキと紙による「光」の生成

「“暗闇の中に浮かび上がる光”にもいろいろな光があります。今回は明暗のコントラストでさまざまな“暗闇の中の光”を表現できるように、紙とインキと絵柄という3つの要素を組み合わせました。実験は、①光のスペクトルの表現、②グラフィックによる光表現のバリエーション、③さらに繊細な光表現の追求の3種類。①はレインボーカラーのグラデーションを、②は光の種類を、③ではじんわり拡散する光の表情を試します。暗さを引きたたせる明るさと、明るさを引きたたせる暗さを、光の切り口から探します。」
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①光のスペクトルの表現
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原稿

チャート状のデータ。

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オペークホワイトの下地データ
1列ごとに上部の濃度が50%、下部が100%
チャート状データ
上段がプロセス濃度100%、中段が50%、下段がスミ50%
用紙/インキ

前回の実験の結果から絞り込んだ黒の用紙。
インキはレギュラーのプロセス4色と蛍光インキ、下地用のオペ―クホワイト。

用紙

スーパーコントラスト(スーパーブラック)

インキ

プロセス4色/蛍光インキ各色/オペ―クホワイト

製版/校正刷り

部分的にオペークホワイトによる下地を刷り、上からCMYのグラデーションを印刷、発色とグラデーションのなめらかさを検討した。CMYはレギュラーインキと蛍光インキで比較している。

刷り順

オペ―クホワイト(×2)→C→M→Y  ※蛍光タイプはCMYを蛍光インキに置き換え

刷り上がり
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右上:レギュラーインキ
オフセット印刷では紙色を完全に隠蔽するのは難しい。その結果、黒い粒子がざらつきのようなイメージを創出した。
右下:蛍光インキ
黒い用紙に刷っても、発色性はそれなりに確保できた。しかも蛍光インキの彩度の高さによって、虹のような透明感のあるグラデーションを生みだせたことは予想外だった。

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②グラフィックによる光表現のバリエーション
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原稿
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グラデーション、放射線、ドット・透過する面の積層など、各種の光のグラフィックパターンのデータ。

この原稿ではグラデーション、線描、ドットの密度、透過表現など、あらゆる要素を用いて光のグラフィック表現のバリエーションを制作し、どの表現がいちばん近いか探った。
用紙/インキ

光表現を担える光沢のある用紙と、闇を表現する黒い用紙の2系統3種を選択。
インキはスミ、蛍光インキ、白、銀、ニスなど。

用紙

クニメタル(クールシルバー)/ミラーコート/スーパーコントラスト(スーパーブラック)

インキ

スミ/マットスミ/蛍光イエロー/銀/オペ―クホワイト/マットニス/グロスニス/パールメジウム

製版/校正刷り

あえて1〜2版という最小の版数に押さえてその効果のほどを探った。シャープな光のディテールを表現する原稿と、拡散する光を表現する原稿の2種を、必要に応じて掛けあわせて印刷した。

刷り上がり
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【ディテール】

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光の質感を担わせやすいツヤのある紙を用いた、光のもっともベーシックな表現。 色と光沢が光の揺らめきに似た用紙を使用。シャープでシンプルな組み合わせ。 揺らぎのある光沢がスミでおさえられ、特に中間トーンできらめきの表現が見受けられた。
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蛍光イエローはマットスミに映えたが、大きな面積になると自然な色には見えにくい。 マットと光沢という正反対の要素を持った用紙とインキの組み合わせ。かえっておとなしいイメージになった。  
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1回刷りでも紙色を隠蔽し、はっきりとしたコントラストを現出している。ただし、なめらかさにやや欠ける。 銀で刷った時よりも光のイメージに近いやわらかさがある。オペ―クホワイト100%よりもなめらかな質感になった。  
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光の角度と視点の位置で明暗が逆転するという不思議な効果が現出。しかし、細線の表現には向かない。    
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③さらに繊細な光表現の追求
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原稿
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拡散する光を表現したグラフィックパターンのデータ。
この原稿では主にはグラデーションを用い、より繊細で、表情のある光のイメージを追求する。紙地や色調など素材感からも近づけていく。
用紙/インキ

光表現を担える光沢のある用紙と、闇を表現する、黒い用紙の2系統3種を選択。
インキはスミ、蛍光インキ、白、銀、ニスなど。

用紙

クニメタル(ホワイト)/ミラーコート/スーパーコントラスト(スーパーブラック)

インキ

スミ/マットスミ/蛍光イエロー/銀/蛍光メジウム/オペ―クホワイト/グロスニス/パールメジウム

刷り上がり
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●ミラーコートでの表現

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自然というより人工的な光のイメージになった。
見る角度によって光の輪郭が見え隠れする、星のきらめきと重なりあうような表現が生まれた。コントラストを際立たせながら輝点にスミを入れた逆光的演出で拡散する光が際立っている。

●クニメタルでの表現

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ちょっと変わった表現を狙い、色みを帯びた用紙とインキを採用したところ、意外な効果が生まれた。夜の街のイメージ。
 

●スーパーコントラストでの表現

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蛍光イエローとパールメジウムの相乗効果で白の粒子が飛び交って見える。面的表現においてはガス灯のような間接照明のような表現になった。
メジウムの部分が予想外なことに赤みを帯びた。ぼんやりとした明るさが面白いが、メジウムは用紙色によって思わぬ効果を生みだすことを再確認することになった。
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インキも紙も黒に限定した表現にトライ。わずかな色みの差とグロス感の差だけで予想以上に光を感じることができた。
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トライアルを終えて
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阿部氏のコメント
「想像以上に多くの光の表し方を発見できましたね。光のスペクトルが思った以上に美しかった蛍光インキの掛け合わせ、光を立体的に見せてくれた黒い紙とニスやホワイト、ミラーコートと銀とスミがつくりだした星のような煌めき感。思った以上のグラフィック効果が得られたように思います。同じグラフィック、少ない版でも、紙とインキと刷り順の変化でこれだけ豊かな表情が出せるんですね。それを改めて確認できたことがとても良かった実験でした。」

担当PDのコメント
トライアル1、2で作った暗闇をベースに、今度は明るさをどうやって作るかに挑戦した。結果として、光には思ったより色表現が効かないことがわかった一方で、白ければよいというものではないと実感した。当たり前のことだが、印刷で表現する光は、光そのものではない。要するにフェイクである。それだけに、どう見立ててどう使うかが問われるのだと、あらためて感じさせられる実験だった。

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入稿に向けて
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「ここまでの実験で見つけた表現を使って最終作品を制作します。最終の構想は頭の中ではほぼ決まっていたので、それをしっかりビジュアルとして組み立てて作品を完成させます。」

プロフィール
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阿部拓也 ABE TAKUYA
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阿部拓也
ABE TAKUYA

アートディレクター
1982年秋田県生まれ。日本デザイナー芸術学院卒業。凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部 トッパンアイデアセンター 東日本TIC部に在籍。アートディレクターとして、主にポスターやカレンダー、VIなどビジュアルコミュニケーションの分野に携わっている。主な実績に「みやぎの環境保全米」ロゴマークなど。2009年デザイングランプリTOHOKU最優秀賞受賞。翌年から審査員を務める。2011年東日本大震災発生後、復興プロジェクト「緑の太陽」の立ち上げに関わる。社団法人日本グラフィックデザイナー協会会員。
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