TOPPAN 凸版印刷株式会社

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GRAPHIC TRIAL グラフィックトライアルトップクリエイターとともに印刷表現の可能性を探ります

GRAPHIC TRIAL 4.トライアル3-菊地敦己
トライアル3
刷版(PS版)に直接描く「ハンド・トゥ・プレート」に挑戦する
「今回のトライアルは刷版に直接手で描く、名付けて『ハンド・トゥ・プレート』です。僕らは175線の網点で印刷されたものに慣れ過ぎてしまったせいか、非常に狭い幅の中でしか印刷物を捉えられなくなっています。そんな狭い領域に押し込められてしまっている印刷物の“物質としての幅”をこじ開けるために、線数も網点もない印刷物をつくってみることにしました。データから刷版をつくるCTP(Computer To Plate)ではなく、印刷用の版に直接手で描いて刷版をつくって印刷します」
※刷版(PS版) 印刷用の版。通常、オフセット印刷では感光剤が塗布されているアルミ製のPS版(Pre-Sensitized Plate)を使用している。そのPS版を露光すると、描画部以外が感光され、描画部には感光剤が残る。感光膜が残った部分にインキがつき、それがブランケットを通して紙に転写されて印刷ができる。
原稿
なし(印刷現場にて直接版を制作)
用紙/インキ
用紙は、前回のトライアルで紙地と特色ホワイトの下地部分の質感の差が最もイメージに合った1種に絞り込んだ。
インキは前回使用したものを中心に用意。
用紙
コンケラーCX22(ダイヤモンドホワイト)
インキ
特色黄緑(蛍光色)/シアン(PANTONEプロセスシアン)/銀/マットスミ/など
刷版の制作/校正刷り
素材となるPS版2種類を用意。ひとつは全面に感光膜があり、焼き付け処理がされていないもの。もうひとつは焼き付け処理で感光膜を完全に除去したもの。
これらのPS版に、感光膜に加筆できるペンを使って描いたり、感光膜を除去するペンを使って消したりすることによって、刷版を作成した。加筆ペン、消去ペンのほかに、ガムテープや紙やすりなども使用した。
描画用具
感光膜を消去するもの 「消去ペン」(刷版修正用に市販されているペンタイプのもの)/
ガムテープ/紙やすり など
感光膜を加筆するもの 「加筆ペン」(刷版修正用に市販されているペンタイプのもの)
刷り上がり
【ハンド・トゥ・プレート】
PS版をガムテープでマスキングしながら紙やすりで感光膜を削り取った版をスミで刷ったもの。
紙やすりの繊細なラインがそのまま印刷物に現出した。
感光膜のないPS版に加筆用の液を垂らした版を蛍光ピンクで刷ったもの。
液体ならではの形状がリアルに残っている。
【A】
消去液をしみこませた布でPS版の感光膜を除去した版を銀で刷ったもの。
網点のない柔らかいグラデーションが表現された。
【B】
「加筆ペン」でPS版に描いた後、「消去ペン」でそのラインを描き消した版をシアンで刷ったもの。
【B】の上に【A】を刷り重ねたもの。
角度によって、シアンが下に刷られている部分がより明るく光る。
「加筆ペン」を使ってシアンと特色黄緑の版をそれぞれ作成。その版を刷った上から「消去ペン」で部分的に感光膜を除去した版で銀を刷ったもの。
【網点のないグラデーション】
使用した版は1版だが、複数のインキを印刷機(単色校正機を使用)の「インキローラー」に並べて付けて刷ってみた。馴染ませずに刷るときれいなグラデーションになった。刷る度にインキが自然に混ざり、グラデーションの幅が1枚ごとに変化する。(インキの並び順:左からイエロー、シアン、オペークホワイト、蛍光オレンジ、シアン)
上は刷り始めて1枚目のもの。
刷り始めて10枚目のもの。
右端の色が濃くなっている部分は、途中で紅系のインキを加えたため。
トライアルを終えて
菊地氏のコメント
「とっても楽しかったです。ほんとに、すごく楽しかった! 印刷機の横で版をつくって、それをその場で渡し、そのまま印刷機で刷ってもらいました。何の工程も経ずに印刷まで到達するなんて、実に面白い体験でした。データに頼らずに、偶然を取り入れた印刷ができたらステキだなと思っていたんですが、それが実現しそうですね。今日の実験結果を踏まえながら、オフセットの複製技術を生かして本番の制作に入りたいと思います」
担当PDのコメント
「もともと刷版の修正用として加筆・消去用のペンは昔からあったものの、それはあくまで万一の時の修正用。積極的に使うなんて考えてもいなかった。私にとってももちろん初めての体験だった。動きやトーンが豊富にあるのに一切網点がない印刷物を見ることになるとは。グラデーションも中間調の部分もあるのに網点がない。密度が高く、とても美しい仕上がり。想像はしたことがあるが、私たちPDも実際に目にする機会はまずないだろう」
本番に向けて
「色と画の組み合わせを考えながら本番の版設計をします。『ハンド・トゥ・プレート』の効果的な方法もいろいろ発見できたので、今度は版の耐久性も配慮しながら作品をつくってみます。もちろん、網点のないグラデーションもぜひ使いたいと思います」
プロフィール

菊地敦己 Kikuchi Atsuki
菊地敦己
Kikuchi Atsuki

アートディレクター
1974年東京都生まれ。武蔵野美術大学彫刻科中退。95年在学中にデザインの仕事を始め、97〜98年「スタジオ食堂」のプロデューサーとして現代美術のオルタナティブ・スペースの運営、展覧会企画などを手掛ける。2000年デザインファーム「ブルーマーク」を設立。主な仕事に、青森県立美術館のVI計画、横浜トリエンナーレ2008のVI計画、ミナペルホネン、サリースコットのブランド計画、雑誌『「旬」がまるごと』のアートディレクションなど。JAGDA新人賞、東京ADC賞、ニューヨークTDC賞など受賞。著書に『PLAY』、『家紋帳』など。東北芸術工科大学客員教授。
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