TOPPAN 凸版印刷株式会社

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GRAPHIC TRIAL グラフィックトライアルトップクリエイターとともに印刷表現の可能性を探ります

GRAPHIC TRIAL 3.トライアル2-永井裕明
トライアル2
色と奥行き、多彩な素材の複雑な表現を
「今回は5種類のトライアルをしたいと思います。1つ目は『キラ(雲母)』。雲母のきらめきや方解末のザラザラ感をどう表現できるか、紙地の上と墨の上で見え方の違いにも注目してみたいな。2つ目は『鉛筆』。鉛筆の硬さで異なる色や光沢だけでなく、線の勢いや筆圧をどこまで出せるか。3つ目は『スクリーン』。鉛筆や箔を重ねた原稿で、奥行きや砂子(散らした箔)の複雑な輝きに挑戦です。4つ目は『色』。水干のマット感、岩絵具のきらめきやざらつき、膠だまりのような質感と、微妙な色彩の鮮やかさの表現がポイントでしょうか。最後は『写真』。砂浜の写真で粒子の表現を確かめたい。そこに透かしインキも使ってみます」
「キラ(雲母)」のトライアル
原稿
画家の牛島氏が制作したテスト用原稿。墨、方解末、雲母(2種)を使用。
ポイントは雲母のきらめき、紙地の上と墨の上、墨の下での見え方の違い、方解末のザラザラ感の表現。
※方解末・・・ 方解石を砕いて作る天然岩絵の具。盛り上げや他の顔料と混ぜて下地作りなどに使用される
※雲母・・・ 鉱物の粉末で、多くは花崗岩に含まれる。光沢があり“きら”とも呼ばれる。浮世絵のきら刷りはこれを用いたもの
用紙/インキ
紙はトライアル1を手がかりに、再現性と質感のバランスから2種類に絞り込む。
インキはプロセス4色の他に、キラ表現のためのパールを混入した銀などを用意した。
用紙
ヴァンヌーボF(ナチュラル)/ヴァンヌーボV(ホワイト)
インキ
スミ/プロセス4色/ホワイト/特色銀(パール混入)/特色銀(パール混入)
製版/校正刷り
トライアル1と同様に共通フォーマットを設定。あらかじめ全ての校正紙にスミ1色で印刷した。(他のトライアルも同様)
微妙な色みを4色で再現し、さらに方解末と雲母の質感をホワイトと特色銀を使って表現することに。加えてキラキラと輝く光を点状の特色銀版で補足した。
版の構成/刷り順
スミ(フォーマット用)→K→C→M→Y→ホワイト→特色銀(パール混入)→特色銀(パール混入)
刷り上がり
用紙:ヴァンヌーボF(ナチュラル)
方解末の結晶のような白みはホワイトを使って紙地と区別した。ザラッとした質感は最後の特色銀版でつくっている。
「鉛筆」のトライアル
原稿
画家の牛島氏が制作したテスト用原稿。7Hから9Bまでの鉛筆を使用。
ポイントは鉛筆の硬さで異なる色や光沢、線の勢いや筆圧などをどこまで出せるか。
用紙/インキ
紙はトライアル1を手がかりに、再現性と質感のバランスから2種類に絞り込む。
インキはプロセス4色のうち、スミに銀を20%混入している。また、9Bの鉛筆の光沢やねっとり感を表現するために特色スミ、特色銀を使用。
用紙
ヴァンヌーボF(ナチュラル)/ヴァンヌーボV(ホワイト)
インキ
スミ/プロセス4色(スミは銀混入)/特色スミ/特色銀
製版/校正刷り
原稿はモノトーンだが、今回の製版ではあえてCMYの3色を主体に設計し、独特の質感を特色で補った。
版の構成/刷り順
スミ(フォーマット用)→K(銀混入)→C→M→Y→特色スミ→特色銀
刷り上がり
用紙:ヴァンヌーボF(ナチュラル)
スミに銀を混入することで鉛筆の色・質感を実現し、プロセスの3色で鉛筆の硬さの微妙な差を際立たせた。
特色スミと特色銀で9Bの鉛筆の光沢やねっとり感を表現。
「スクリーン」のトライアル
原稿
画家の牛島氏が制作したテスト用原稿。5Hから2Bまでの鉛筆と銀箔を使用。
ポイントは鉛筆の重なりの奥行きと砂子(散らした箔)の複雑な輝き。
用紙/インキ
紙はトライアル1を手がかりに、再現性と質感のバランスから2種類に絞り込む。
インキは特色中心で構成。
用紙
ヴァンヌーボF(ナチュラル)/ヴァンヌーボV(ホワイト)
インキ
スミ/特色スミ/特色銀/特色銀(パール混入)/特色銀(スミ混入)
製版/校正刷り
鉛筆はトリプルトーンで製版。銀箔はダブルトーンで、ベースとなる銀のベタ版と、調子版として極端に硬い版で構成している。
版の構成/刷り順
スミ(フォーマット用)→特色スミ(鉛筆用)→特色銀(鉛筆用)→スミ(鉛筆用/シメ版)→特色銀(パール混入/銀箔用)→特色銀(スミ混入/銀箔用)
刷り上がり
用紙:ヴァンヌーボF(ナチュラル)
銀箔は輝きを増すためにパールを混入し、上からわずかな特色銀版で調子をつけた。鉛筆は濃淡をトリプルトーンで再現した。
「色」のトライアル
原稿
画家の牛島氏が制作したテスト用原稿。岩絵具(3種)、透明水彩、水干(3種)、方解末、雲母(2種)を使用。
ポイントは水干のマット感、岩絵具のきらめきやざらつき、膠だまりのような質感と、微妙な色彩の鮮やかさの表現。
※水干・・・ 貝殻を粉にした胡粉に染料や顔料で着色したもの。きめが細かく鮮明な発色が特長
用紙/インキ
紙はトライアル1を手がかりに、再現性と質感のバランスから2種類に絞り込む。
インキは、広演色インキ「Kaleido」を主軸とした。
※Kaleido・・・ 従来のプロセス4色印刷では再現しきれなかったRGB画像の広い色領域を、6色、7色印刷に近いレベルで再現可能とした4色プロセスインキ
用紙
ヴァンヌーボF(ナチュラル)/ヴァンヌーボV(ホワイト)
インキ
スミ/シアン(Kaleido)/マゼンタ(Kaleido)/イエロー(Kaleido)/特色蛍光グリーン/特色パール/特色パール
製版/校正刷り
水干独特の透明度の高い鮮やかな色彩は広演色インキ「Kaleido」と蛍光グリーンで表現することに。膠だまりのグロス感、方解末・キラの質感はパール版で表現している。
版の構成/刷り順
スミ(フォーマット用)→C(Kaleido)→M(Kaleido)→Y(Kaleido)→特色蛍光グリーン→特色パール(膠だまり用)→特色パール(キラ用)
刷り上がり
用紙:ヴァンヌーボF(ナチュラル)
膠だまりの部分はパール版で光沢をのせ、膠の質感を演出。
水干に混ぜた雲母(キラ)の透明感のあるきらめきやザラリとした質感にもパールを使用。
「写真」のトライアル
原稿
写真家の市川勝弘氏による写真作品(紙焼)2点
用紙/インキ
紙はトライアル1を手がかりに、再現性と質感のバランスから2種類に絞り込む。
インキは、写真用の特色2色と、透かしインキを使用した。
用紙
ヴァンヌーボF(ナチュラル)/ヴァンヌーボV(ホワイト)
インキ
スミ/特色グレー/特色スミ/透かしインキ
製版/校正刷り
写真部分はモノクロのダブルトーンで製版。トライアル1で使用したマークを透かしインキ用にベタ版で使用。
版の構成/刷り順
スミ(フォーマット用)→特色グレー→特色スミ→透かしインキ→透かしインキ
刷り上がり
用紙:ヴァンヌーボF(ナチュラル)
トライアルを終えて
永井氏のコメント
「さすが2回目ともなると、ワザが冴えてかなりの手ごたえを感じます。鉛筆の表現、箔の表現はなかなかすごいものがありますね。ただ、キラ感やざらつきなど物質的な再現はやはり難しいことがわかってきました。やりすぎると『加工もの』的世界に入り込んでしまうし、限界は限界として理解して、効果的なものを抽出して原稿に反映させたいと思います。とはいえ、最終作品は多彩な要素がてんこ盛りになりそうです。それぞれの技が光っているけれど調和がとれた、品のいい幕の内弁当を狙います」
前回のトライアル1では墨や鉛筆の再現に特色中心で挑んだので、永井氏と相談の結果、今回はプロセス4色をベースにしながら4色印刷ならではの微妙な色みを生かせるようにと取り組んだ。キラ感の表現や光沢用のパール版などは、通常の分解では読み込めないものも多かったので、製版技術者があの手この手でつくった版が随所にあった。そうした技によって「鉛筆」や「色」、「スクリーン」のトライアルは、ぴたっとはまった感じがした。一方、「キラ」のようにつくりこみすぎてしまった例もある。どこが落としどころか、その判断はやはり難しい。
次に向けて
「最後のトライアルでは、罫線や活版によるパターンなどを実寸で印刷するなど、グラフィックならではの要素を中心にトライアルしてみるつもりです」
プロフィール

永井裕明 Nagai Hiroaki
永井裕明
Nagai Hiroaki

アートディレクター
1957年東京都生まれ。
東京都立工芸高等学校デザイン科卒業後、ブレックファーストを経て、88年N.G.設立。主な仕事に、佐川急便CI・グラフィック全般、横浜ゴム「PRGR」「ADVAN」グラフィック広告、和歌山県観光キャンペーン広告、サントリー「山崎」「膳」グラフィック広告、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館「Jan Fabre展」「オシャベリ@美術館展」、川村記念美術館「ピカソ展」「パウル・クレー展」など。N.Y.ADC国際展金賞・銀賞、全国カタログ・ポスター展通産大臣賞、JAGDA新人賞、東京ADC賞など受賞。
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