TOPPAN 凸版印刷株式会社

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CREATOR’S FILE クリエイターズファイルトップクリエイターに、仕事や考え方について伺います

名久井直子「本は言葉を乗せる舟 装丁は舟をつくる仕事です」

35 名久井直子

第3話「その世界観に寄り添いながら――絵本の装丁」

―小説以外にもいろいろ手掛けていらっしゃいますね。

 ジャンルに関わらず何でもやってみたいと思っています。これまでにも絵本や漫画、写真集やイラスト集なども手掛けました。小説の場合は文意から汲みとって雰囲気をつくりあげていきますが、作品集などの本は既に作者の「作品」がはっきりとあるので、それをどう組み立てていくかを考えます。そういうものは本文をフォーマット化し難いために全頁を自分でつくることになり、その分大変な部分もありますが、それはそれで小説とはまた別な楽しさがあります。
 手掛ける中でも私が大好きなのが、海外の絵本の日本語版をつくる仕事です。他の言語で書かれた言葉を、日本語という異なる言語でどうやって同じ雰囲気にしていくか、それを考えながら組版するのがとても楽しいんです。時々、どうしても日本語では表現しにくいものもありますが、それをどうやって元の本のイメージに近づけていくかもまた面白いところです。

―翻訳によってもずいぶん変わる部分もあるのでは?

 それは確かにあります。言語から言語へどう置き換えるかによって雰囲気もずいぶん違ってきますし、実際に装丁の段階で相談させていただくこともあります。でも、翻訳者によってはビックリするくらいピタッとはまってくれて、本当に気持ちいいんです。文芸系も手がけるブックデザイナーで絵本もやるという人は意外と少ないようなんですが、同業者の皆さんに「もっと絵本をやってみて」と言いたいですね。
 そう思うのも、きっと私がデザインする中で自分の色みたいなものを出すことや、「デザインしています」というようなデザインにあまり興味がないからでしょうね。自分が作品の世界に寄り添う、という進め方が、絵本の仕事が好きな理由なのかもしれません。

左:『だれがおこりんぼう?』 右:『だれのちがでた?』(やんちゃっ子の絵本)
(著:スティーナ・ヴィルセン/訳:ヘレンハルメ美穂/クレヨンハウス/2012年)
親本の手書き風のタイトルを、かすれまで含めて日本語タイトルで表現。

※画像をクリックすると拡大表示されます。

―絵本ならではの苦労というのもありますか?

 元になる親本と色を合わせるのが難しいですね。海外と日本ではインキや印刷機や、加工の方法からして違いますから、どうしても色が異なってしまいます。先方から特色を指定されることもあるのですが、どう頑張っても厳密に合わせることはなかなか難しいんです。

―日本語版をつくる場合には、印刷的な難しさもあるわけですね。

 そうですね。実は本国版より日本語版の方が色がきれいに仕上がってくることもよくあるので、そんな時は厳密に合わせるよりも、その雰囲気がちゃんと出ているかどうかで判断しています。もともと海外の印刷はカチッとしていて色もはっきりしすぎている傾向があるので、わざと柔らかなトーンに振って、日本人の好みに合わせることもあります。

―最後に、今後どんな装丁をつくっていきたいのか教えてください。

 よい本を、できるだけ売れるようにつくって、できるだけ多くの人が手にとる本をつくりたいと考えています。増刷されてより多くの人に届いてくれていれば、いつか誰かが別の新しい舟をつくってくれる可能性もより大きくなるはずです。言葉が本という舟を乗り継ぎながら残っていくためにも、できるだけたくさんの人にその本が届くようにしたいと思いながら装丁していきたいと思います。

名久井直子
ブックデザイナー
1976年岩手県生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。
第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。主な仕事に、『愛の夢とか』(川上未映子)、『夜また夜の深い夜』(桐野夏生)、『まばたき』(穂村弘 作・酒井駒子 絵)、『宇野亞喜良クロニクル』など。

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